2008年2月25日月曜日

氷かき



朝(2月24日)起きると、庭の車が雪をかぶっていた。
晴れてはいるが、風が強い。典型的な冬型の気圧配置になったようだ。

24日は日曜日。夏井川渓谷の牛小川(うしおがわ))にある無量庵へ行く日だ。普通は土曜日に行くのだが、23日は強風と寒さに負けて、平の自宅でけんちん汁(豚汁)をつつきながら焼酎をあおって、寝たのだった。

車の雪をはらいながら、道々の積雪状態を想像する。
<夏井川渓谷まではノーマルタイヤでもなんとか行けるだろう>
昨秋、ガソリン食い虫の「パジェロ」から優等生の「フィット」に切り替えた。
燃費はいいのだが、突風が吹くとひっくり返るのではないか――そう思わせるほど、車体が軽い。その軽さにまだ気持ちがなじんでいない。

自宅を出ると、西に阿武隈高地の山並みが見える。思ったより冠雪量が少ない。

夏井川に沿って国道399号を、小川からはさらに県道小野四倉線を進む。

渓谷の入り口に当たる高崎(小川町)あたりは、路面に雪が積もっているが、アスファルトが見えないほどではない。いわば黒服の上に薄い白絹をまとった女性のような風情だ。

JR磐越東線の「上小川」トンネルに接する「磐城高崎」踏切を過ぎると、地獄坂だ。進行方向左側が杉林になっている。圧雪状態なら一番厄介な場所である。
意外と雪が少ない。杉林が防風雪の役目を果たしたようだ。杉の枝が道路に散乱しているが、これも「滑り止め」の役に立っている。

坂を越えると渓谷である。

日なたと日陰が交互に現れる。
道路の雪は薄かったり濃かったりする。
車の速度は20~30キロ。
通常の半分だ。
対向車もソロリソロリとやって来る。
いうならば、スロードライブである。

渓谷最大の難所は江田(えだ)の手前、香後(こうご)と釜ノ平(かまのだいら)の境にある急カーブ。
ここには冬場、滑り止め用の砂が常置されている。
何年か前、この急カーブがカチンカチンのアイスバーンになっていて、パジェロでもハンドルを切るのに苦労した。そんな記憶がよみがえる。
やはり雪が積もっていて、アスファルト路面が見えない。とはいえ、積雪は2、3ミリあるかないか。車がすべるほどではない。

急カーブを過ぎれば、無量庵のある牛小川まではすぐである。
江田と椚平(ぬぎだいら)の集落を通り過ぎると、「籠場(かごば)の滝」。牛小川の入り口である。

そこからほどなくして牛小川の集落に着く。

 無量庵は県道沿いにある。
門にチェーンが張られてあるので、カミサンがチェーンをはずすのを待って、車を入れる――というのが、いつものパターンだが、今度は違った。
アクセルを踏んでもタイヤが空回りする。無量庵の前だけ道路がシャーベット状になっていたのだ。
何度かアクセルを踏んでいるうちに、やっと車を無量庵の庭へ入れることができた。
最後の最後になって、体に力が入った、というわけだ。

そのままにしてはおけない。
竹ぼうきで雪かきを始める。シャーベット状の雪は、ほうきなんかではがれるものではない。
<何かいい手はないものか>
ひらめいたのが、竹の熊手である。

道路のシャーベットは圧延状態ではなく、かけらがちらばって固まったようになっている。電線や木の枝に着いた雪が落っこちてシャーベット化した、そんな感じである。

それを熊手でかきとる。
根っこを生やした草ではないから、気持ちよいくらい簡単に氷がはがれる。
ガリッ、カラカラ。
ガリッ、カラカラ。

竹の熊手で氷かき。
生まれて初めての経験だ。

もっとも、渓谷の上に太陽があらわれ、ビーム光線を浴びせると、道路の雪はたちまちのうちに溶けてなくなった。
太陽のありがたさを実感しながらも、「熊手で氷かき」の愉快さにひたった一日だった。

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