2008年5月11日日曜日

四十数年ぶりの蒸し釜炊飯


カミサンの実家にある物置を解体したとき、以前使っていたという蒸し釜=写真=が出てきた。湯気出しをふさぐ上蓋が一部欠けているほかは、なんとか使えそうだ。週末に過ごす夏井川渓谷の無量庵へ、蒸し釜を運んだ。

蒸し釜は中央部が膨らんだ縦長円形の素焼きの道具で、炭を燃料に羽釜をかけてご飯を炊くのに使う。空気を取り入れる四角い小さな穴のある下竈と、湯気出しの筒が頭についている上竈のふたつからなっていて、羽釜のご飯が湯気を噴いたら下竈の空気口と上竈の湯気出しに蓋をして酸素の補給を断ち、余熱でご飯をふっくら炊き上げる。

ガス釜もいいが、炭を熾して蒸し釜でご飯を炊くのもいい。というより子供のころ、蒸し釜でご飯を炊くのが兄弟の役割だったので、なつかしくなったのだ。蒸し釜で炊いたご飯の味も。

親は床屋をやっていて、客があれば夜遅くまで店を開けていた。で、ついつい朝は起きるのが遅くなる。子供に、家の前の道路の清掃やご飯炊きの仕事が回ってきた。

鉄の羽釜で米をとぎ、炭を熾して蒸し釜に入れ、その上に羽釜をのせて上竈をかぶせる。漫画なんかを読みながら蒸し釜の前にじっとしている。勢いよく湯気が上がったら、素早く上と下の穴に蓋をする。それで羽釜の底が少しこげたご飯が炊き上がる。この蓋閉めのタイミングが遅れるとご飯があらかた焦げてしまう。

ある日、カミサンが知り合いの骨董店から鉄の羽釜を持ってきた。ちょうどうまい具合に蒸し釜の置き台にかかった。買いましょうとなって、無量庵へ泊まった翌日、炭を熾して蒸し釜でご飯を炊いた。四十数年ぶりの挑戦だった。

上竈の表面がだんだん熱くなる。羽釜のなかで米が煮立っている音がする。蒸し釜特有のお焦げのにおいがかすかに立ち昇る。さあ、あとは湯気が噴くのを待つばかりと構えていたが、湯気はほとんど透明だ。そのうちお焦げのにおいが強くなってきた。ヤバイ! すぐ蓋を閉めた。

失敗である。3分の2は焦げた。残る3分の1のご飯を食べながら、反省する。おそらく炭の量が多かったのだろう。羽釜の容量に見合った炭でいいのに、張り切って入るだけ炭を入れた。火力がオーバーだったのだ、おそらく。次はもっとうまくやらなくては。

1 件のコメント:

Unknown さんのコメント...

先日リサイクルショップで不思議な形のツボを見つけ中になりましたが、その日は急いでいたので、家に帰りました。ネットで何に使うのか調べたら、ご飯を炊くものだと知り、次の日、車で1時間ほどかけてリサイクルショップに出かけ、買ってきました。その日は結婚39年の懸念日。良い記念になりました。五月の連休に孫とご飯炊きに挑戦してみるのが楽しみです。初めてなので参考にさせて頂きます