2008年6月17日火曜日

夏井川渓谷の景観復活


夏井川渓谷は「夏井川渓谷県立自然公園」の中核をなす。同自然公園は①夏井川本流、背戸峨廊(セドガロ=江田川)、二ツ箭山を含む地域②水石山、閼伽井嶽を含む地域――の二つからなり、①はバスツアーの中高年登山者が関東圏からやって来るなどして、入り込み客数が増えつつある。

「自然公園」とは言っても人が住んでいる。当然、住民の暮らしと経済が景観に反映される。夏井川本流に寄り沿う県道小野四倉線沿いには小集落が点在し、少しばかりの水田と畑が開かれ、ところどころ杉の人工林が見られる。最近、道路沿いの杉林2カ所ほどが冬季のアイスバーン防止のために伐採され、1カ所が行楽客のマイカー駐車場に替わった。

私が週末を過ごす無量庵は、いわば中核のなかの中核、自然公園のど真ん中にある。無量庵の隣は昔、酒屋(小売業?)だった。最近まで、人が借りて住んでいた。その私有地の谷側と山側(線路のそば)に45年ほど前、杉苗が植えられ、それが太く大きくなって景観を遮るようになった。

で、あるとき隣家の所有者と話をしていると、「間もなく杉を切るから」。願ってもないことだ。植えたのは先代だろう。それが代替わりして、自然環境・景観には鈍感でいられなくなった。

用材やチップになると言っても、杉の価格は低迷している。放っておくしかないと考えるのが普通だが、所有者は決断した。借家人が出て行くのを機に、家を取り払い、杉を切り払って、景観を取り戻そう――。

県の許可が下りてしばらくたってから、家の解体が始まり、次いで伐採が始まった。6月15日現在で谷側の杉は消え、山側の杉がいくらか残っている程度、というところまで事態が進展した。

とにかく、谷側はほぼ45年前の景観を取り戻した=写真。夏井川渓谷に新たな、というより昔ながらの視点場(ビューポイント)が復活した。となれば、渓谷の付加価値は一層高まる。

今までの夏井川渓谷にはない(正確にはかつてあった)、新しい夏井川渓谷の出現。それを狙って、秋の紅葉と春のアカヤシオの時期には、カメラマンが殺到するに違いない。家の跡地は一部を除いて駐車場にするというから、行楽客にも感謝されるだろう。時代の潮流にさおさす英断、と評価したい。

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