2008年7月6日日曜日

「人名事典」にも間違いがある


2005年9月22日に満78歳で亡くなった、いわき市の作家草野比佐男さんの本を集中的に読み返している=写真。「農家林家」としては暮らしが立ちゆかなくなった昭和40年代半ば、転職を考えた草野さんは一度、阿武隈山中の自宅から平の街へ出かけて興信所の面接を受ける。

採用が決まると、しかしその場で就職を断る挙に出た。「田畑か収入かの二者択一」が胸の中に沸き起こり、「田畑」を選んだのだ。以来、貧窮の底に沈もうともむらに立てこもることを決意し、出稼ぎ・転職が当たり前になったむらのありようを、悪政を、農民の変質を告発する文章を書き続けた。

草野さんといえば、ロングセラーの詩集『村の女は眠れない』だろう。4年前には『定本 村の女は眠れない』が出た。

定本のあとがきによれば、『村の女は眠れない』は最初(1972年)、たいまつ社から出た。次に74年、光和堂が発行元になる。そして2004年、梨の木舎から定本が刊行された。

たいまつ社版と光和堂版では内容にかなりの取捨や入れ替えがある。定本は「光和堂版とほとんど同じだが、一編まるごと、また部分的削除と書き直し、字句の訂正、たいまつ社版からの追加、未収録作品の追加などを行い、配列の順序も多少変えた」(あとがき)。同じ詩集『村の女は眠れない』でも、版を変えるごとに手を入れている、その執念はなかなかのものだ。

ついでに、こんなことも明かしている。講談社日本人名大辞典「(昭和)47年刊行の『村の女は眠れない』はテレビで放映された」(たいまつ社版に依拠)、現代日本朝日人物事典「1974(昭和49)年に発表した詩集『村の女は眠れない』は、(中略)NHKから放送されて反響を呼んだ」(光和堂版に依拠)とあるが、事実は逆。

正しくは「書名と同題の一編が読まれたドキュメンタリー番組の評判によって、図らずも(詩集が)世に出た」。人名事典にも間違いがあるから、鵜呑みにはできない。

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