2008年7月13日日曜日

夏井川渓谷の「崩れ」後日譚


夏井川渓谷(いわき市小川町上小川字牛小川)の両岸には幾重にも国有林が広がる。磐城森林管理署の区分では、わが無量庵の真ん前(右岸)は「いわき市三和町下永井字軽井沢国有林3い林小林班外」だ。

東北電力が水力発電所の導水路をチェックする巡視路が川に沿って伸びている。行楽客の遊歩道を兼ねる。1カ所、落石が常態化した斜面がある。最近、大きな落石があったために、立ち入り禁止のロープが張られた。で、そこを「崩れ」と呼んで行楽客に注意を喚起せねば、という話を書いた(7月1日)。

昨日(7月12日)、対岸へ渡ると通行が可能になっていた。「崩れ」のそばに「国有林野許可標識」が立っている。東北電力が巡視路敷76平方メートルを借り受けた、というのが内容だ。

まず、その地が「いわき市三和町…班外」であることが、それで分かった。電力が「崩れ」に残っている浮石を除去して巡視路敷に集めるために、森林管理署の許可をもらったのだろうか。にしては、借り受け期間が落石前の平成19年4月1日~同22年3月31日になっている。面積も小さい。

道端から川岸側に大量の石が積まれてあった=写真。浮石を除去して、道に沿って帯状に石をそろえたのだ。細長い面積、たとえば19メートル×4メートル=76平方メートル=を想定すると、借り受けた巡視路敷はそこか、となる。

見上げると、斜面の浮石はかなり減っていた。注意しながら通り過ぎる。久しぶりに森の奥へと分け入った。林内は特に変わった様子もなかったが、澄んだ声で鳴いている鳥がいた。オオルリではない。キビタキでもない。クロツグミだろうか。キノコは、乾きかけたドクベニタケが1個あるだけ。

帰路、再び「崩れ」を観察する。落石の供給源とみられる岩盤が中腹にのぞいていた。なんだか岩が層を成している感じである。その層に沿って風化・剥離が起きるのか。当面は危険度が下がったとしても、時間がたつとまた崩落が起きる。それを忘れると痛い目に遭う。

夕日が尾根に沈んだころ、無量庵で独酌を始めた。「崩れ」の斜面が滑り台のようになっているのを思い浮かべながら、グイっとやっていると、裏山からかすかに「カナカナカナ…」が聞こえてきた。今年初めてのヒグラシの声。夕方にはニイニイゼミが物寂しげに鳴いていた。それも今年初めて聞いた。梅雨の晴れ間、夏井川渓谷にも夏の色が濃くなってきたようである。

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