2008年7月27日日曜日

天然氷のオンザロック


夏井川渓谷にヒグラシの輪唱が響く夕方、万緑の対岸を眺めながら独酌を始める。ちょうどもらったばかりのいわきの地酒「又兵衛 原酒」がある。オンザロックにした。氷は天然氷である=写真。

極寒期の1月末、対岸の「木守の滝」にできた氷柱をかち割って持ち帰り、冷蔵庫の冷凍室に入れた。毎年、梅雨が明けると「氷室開き」と称して、ひとりオンザロックを楽しむ。そのときまで半年弱、天然氷を眠らせておくのだ。

いつもの土曜日だと、「マルト平窪店」でカツオ半身を買い、包丁を入れて酒の肴にし、李白をまねて「一杯一杯復一杯(イーペイ・イーペイ・フー・イーペイ)」といくのだが、今回(7月26日)は平沼ノ内の土曜朝市で手に入れたイカがある。朝はイカ刺しにしたので、晩はバター炒めだ。

米をといでご飯を炊く。自宅から持参した酒のつまみをそろえる。イカはゆでてあるので、輪切りにして炒める。さあ、用意はできた。グラスに天然氷を入れて酒を注ぐ。冷えたところをグビッとやる。温かいイカを口に入れる。間に、やや酸味のあるキュウリの古漬け、甘く煮付けた巻き貝、インゲンの素揚げを口に運ぶ。味と歯ごたえ、温度の落差・変化が食事の単調さをカバーする。

グラスを電灯にかざすと、ほんのり白い煙が立った。指の熱が伝わって「霧」が発生したのか。それともグラスを持ち上げた瞬間、昼のほてりが残る空気が急冷されて「霧」ができたのか。

ヒグラシの輪唱が終わったら、人間の音楽が始まった。CDではなく、カセットテープで井上陽水、河島英五、U2、エンヤを聴く。いずれも現役のころ、職場の若い仲間や知人がプレゼントしてくれたものだ。

天然氷はゆっくり凍るので緻密、だから溶け方もゆっくりしている。カセットテープをかけ直し、グラスに「又兵衛」を注ぎ足しているうちに、1時間余が過ぎた。それでも氷はまだ殻付き落花生の大きさで残っている。また氷を入れたら飲み過ぎるだろう。珍しく自分にブレーキをかける。9時前にはご飯を食べて床に就いた。

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