2008年8月4日月曜日

「ケツメイシ」の詞の力


疑似孫の両親から「ケツメイシ」のCD『ケツノポリス6』が届いた。全国紙に全面広告が載った数日後、わが家へ酒を飲みに来たとき、何気なく「欲しいなぁ」と言ったらしい。早速、買って来てくれたのだった。

何年か前、車でFMいわきを聞いていたら、「花鳥風月」というタイトルの歌が流れた。若い歌い手なのに「花鳥風月」とは面白い。メロディーも、歌詞もすんなり耳に入ってきた。「ケツメイシ」というヒップホップグループの歌であることを、そのとき初めて知った。

すぐCDを買った。しばらくして『ケツノポリス4』が出たので、それも買った。気に入った。去年(2007年)の秋、会社を辞めた日から『ケツノポリス4』の「ドライブ」を自分の応援歌にして、新しい生活へ踏み出した。

で、今度は『ケツノポリス6』である=写真。CDのテーマは「子ども」だろう。メンバーのだれかが親になったらしく、子どもを慈しみ、母をいとおしく思う気持ちが歌によく表れている。それが、私には孫の成長を応援する歌のように聞こえた。二つの曲に絞る。

まず「オレの道オマエの道」の<道のりは何通りもある/時に心病みそうになる/人生の目的なんて/死んでから問うべき>。とにかく目指す道を進め、さかしらに人生の目的とは何だろう、などと問うな。そんなことは死んでからやればいい。

草野心平の詩「ヤマカガシの腹のなかから仲間に告げるゲリゲの言葉」に出てくる<死んだら死んだで生きてゆくのだ。>と逆の発想ながら、通底するものは同じ。強く明るい生命力を感じ取ることができる。

そして、子どもが生まれてより一層実感する母の慈愛。そのことを歌った「伝承」の、このフレーズ。<あなたを選んで 生まれた/あの日私を 笑顔で迎えた>

吉野弘の詩「I was born」では、少年が「文法上の単純な発見」として父に言う。<正しく言うと人間は生まれさせられるんだ。自分の意志ではないんだね>。ところが、「ケツメイシ」の詞は違う。生まれることは選択できない宿命ではなくて、新しい命が母親として「あなた」を選んだ結果なのだと。

吉野弘の詩に漂う人生の寂しさが、ここでは強い生命感に満ちあふれている。母と子の関係に新しい世界を切り開いたのだ。母性とは笑顔。

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