2008年8月7日木曜日

「じゃんがら」はオフビート


いわき地方に伝わる「じゃんがら念仏踊り」は、今でこそ青年会が中心になって演じる新盆供養の郷土芸能だが、江戸時代には老若男女が「仮装」して「踏舞」するカーニバルだった。

いわきの人間のみならず、「じゃんがら」を知った者は月遅れ盆がきて「チャンカチャンカ」の鉦の音を聞くと、踊りの神様にそそのかされたような気分になる。踊りを見るだけでも血が騒ぐのだから、演じている青年たちはときに恍惚とすることがあるのではないか。

「じゃんがら」の鉦が鳴り出すと、幼い子どもまで体をスイングさせる。「じゃんがら」のリズムには、なにか人の心をゆさぶるものがあるに違いない。それを紐解く言葉を探していたら、音楽関係者が「『じゃんがら』はオフビート」と言っているのを知った。

オフビートを検索したら、こうあった。たとえば、4拍子の曲は1小節に4分音符が4つ入るのが基本で、西洋の音楽は1拍目と3拍目にアクセントがある「強・弱・中強・弱」だ。これに対してジャズは2拍目と4拍目にアクセントがおかれる。つまり「弱・強・弱・中強」。これをオフビート(アフタービート)という。黒人が生まれつき持っているビートだそうだ。

5年前、「じゃんがら」とジャズを融合させた「じゃんがらジャズフエスティバル」がいわき明星大を会場に開かれた。遅まきながらオフビートが「じゃんがら」とジャズを結びつけたのだと納得した。「じゃんがらフェス」をルポした「いわき人(ビット)」4号(平成16年7月=いわき未来づくりセンター刊)も、「じゃんがら」本来の魅力はカーニバル的な踊りの渦にあることを強調していた。

さて、昨日(8月6日)は平七夕まつり初日。会場の一角で恒例の「青年じゃんがら大会」が開かれた。オフビートを体感すべく特設ステージ(大型トラックの荷台)の前へ詰めかけた。ほかに、歩行者天国になった七夕まつり会場の何カ所かで「じゃんがら」が披露された。参加したのは平地区周辺の14団体のみだったが、「じゃんがらフリーク」にはこたえられない一夜になったことだろう。

帰り道、踊りの興奮が立ちのぼるステージから少し離れた細道に目をやると、次の会場へ向かう「じゃんがら」チームの後ろ姿=写真=があった。笹飾りを見ようと集まった人でにぎわう表通りから一歩裏通りへ入ると、歩く人もなく、しんと静まり返っている。青森のねぶたも、秋田の竿灯も、山形の花笠も、仙台の七夕も、裏通りはみんな同じに違いない。

ハレの舞台へケの道を行く。ケの空気に染まって無防備になる。「じゃんがら」道中ではなく、ただの通行人の集団だ。それもカーニバルの日だから、絵になる。

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