2008年9月10日水曜日

飛んだのは「さくら」


毎日、残留コハクチョウにえさをやっているMさんと久しぶりに話した。

早朝(9月8日)、堤防の上を歩いていると、珍しく遅い時間(といっても6時半過ぎ)に、Mさんの軽トラがあいさつ代わりの警笛を鳴らして追い越して行く。残留コハクチョウが呼び水になって、10月下旬になると仲間が北国からやって来るのだが、今はまだ4羽が暑くてねっとりした日本の夏をしのいだところ。それを何年も支えてきたのがMさん夫妻だ。

夏井川に面した平中神谷字調練場の砂州が、コハクチョウのえさ場である。Mさんがえさのパン屑などを持って来るのを体が覚えていて、朝になるとコハクチョウが砂州へやって来る=写真。

Mさんに確かめたいことがあった。残留コハクチョウ4羽のうち、1羽が空を飛ぶようになった。古い順から「左助」「左吉」「左七」「さくら」だが、飛んだのはだれ?

残留最古参の「左助」は夏井川河口周辺にいる。Mさんの話では、今はまた横川を伝って仁井田川河口へ移動し、橋の下で休んでいる。「夏井川河口は先日の大水でブン抜けたが、またふさがった」。夏井川が川らしく海とつながっている日数はせいぜい1週間か10日くらいだ。かわいそうな川になったものだ。

左の翼をけがしてだらりと下がっている「左助」は、だからそこにいる。ほかの3羽は、国道6号常磐バイパス終点・夏井川橋をはさんだあたりで過ごしている。たいがいは一緒だ。「左吉」は左の翼、「左七」は右の翼が折れている。「さくら」は幼鳥だが、最近は首の灰色が薄くなって大人に近づきつつある。が、体はまだ小さい。

「飛んだのは? 『さくら』」。Mさんの答えは明快である。私の中に奇跡を期待するなにかがあった。「左吉」でもいい、「左七」でもいい、傷が癒えて飛んでくれたら、と。それはやはり無理だった。

「さくら」はシベリアで生まれていわきへやって来た。小さいけれどもシベリアから渡って来た。半分大人になった今は、来春、みんなと一緒にふるさとへ帰っていけるといい。そんな思いである。

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