2008年11月30日日曜日

スズメバチの古巣を床の間に


夏井川渓谷(小川町上小川字牛小川)の紅葉も終わりを迎えつつある。無量庵の正面、対岸の広葉樹はすっかり葉を落とした。一部に黄葉が見られるものの、灰色の幹が林立し、同じく灰色の枝がむきだしになって四方八方に広がっている。「木守の滝」の白糸もちらちら見えるようになった。

師走を前に、しておかねばならいことがある。梅の木の剪定だ。「サクラ切るアホ、ウメ切らぬバカ」で、徒長枝をほったらかしにしておくと、高い所に実がなって取りづらい。枝が横にはうように、実をもぎやすいように、ときにばっさりやることも必要。思いきり切った。風呂場の前のカリンの幹も、枝も切った。

脚立を持ち出したついでに、軒下のキイロスズメバチの古巣をはぎとる。最初、手でやったが、びくともしない。すごい接着力だ。巣は何層にもなっているらしく、一層一層は紙のように薄くもろい。強く手が当たったところは壊れてばらけた。雨に弱いから軒下のようなところを選ぶわけだ。

自然界のなかに人間が見え隠れし始め、雨風をしのぐ人間の住まいが目前に現れたとき、ハチたちは雨風をしのぐ樹下や木のうろなどの代替環境をそこに見いだしたのだろう。これは私の想像だが、スズメが子育て場所に木のうろより安全な人家の屋根裏を選んだように、ツバメが洞窟より人家の軒下が安全なことを発見したように。

ハチの古巣は、軒下に接している部分が壊れてもやむを得ない。ナイフを入れて、切り取るようにしてやっとはがした。近くにある小さな古巣も同じ要領ではぎとった。なんという軽さ! 見た目は「茶色い練り込みの壺」でも、原材料はセルロースだから「折り紙」に等しい。できるだけ壊さないようにして、無量庵の床の間に飾った=写真

プラスチックのように、人工的に稠密にされた化合物ではない。天然の化合物だから、やがては分解してバラバラになる。そこがいい。そのときまでしげしげと古巣を眺めては、天然の造形の妙を感じていたい。

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