2008年12月15日月曜日

「ラストダンス」をヒラタケと


おととい(12月13日)、キノコの「ヒラタケ白こぶ病」を報告した。森の小さな異変は地球温暖化という大きな病と無縁ではないだろう――。それを、夏井川渓谷(いわき市小川町上小川字牛小川)でも確認した。

小雨の降るきのう早朝、夏井川渓谷の無量庵へ出かけ、こうもり傘をさして森を巡った。とっくに秋のキノコは終わっている。目当ては冬のキノコだ。あってもなくてもいい。エノキタケを探した。エノキタケはなかった。代わりに、ヒラタケの大物がかたまって生えているところに出くわした。

いつものコースからちょっと逸脱するか。わきに入ってヤブこぎをしたら、大きな倒木に何種類かのキノコが生えていた。1つは雨に濡れて黒々としたホットケーキ大のキノコ、幹の反対側をのぞくと黄色地に赤みがかかったエノキタケ風のキノコが群生していた。

黒っぽい「ホットケーキ」を横から下から眺めると、まぎれもないヒラタケだ。大きさといい弾力といい、これほど立派なものに出合ったことはない。ヒラタケと分かった瞬間、体が変なステップを踏んでいた。「マイタケ伝説」はうそではないのだ。ヒラタケでも踊り出すのだ。

しかし、3分の1は「白こぶ病」にかかっていた。それが夏井川渓谷にまで北上して来たことに、いささかショックを受けた。

「白こぶ病」にかかったものを残してヒラタケを採ったあと、反対側にある色の明るいキノコをじっくり観察した。脳味噌がヒラタケで湯気立っている。エノキタケと思い込んでいるかもしれない。いや、もっと勝手に解釈してナメコではないか、と思いこんでいるかもしれない。冷静さを欠いているから怖いのだ。

ちらっと脳裏をよぎったキノコがある。猛毒のニガクリタケ。1つ採って噛んでみた。苦みがあるような、ないような。判断がつかない。が、傘の表面にぬめりがない。柄もまるでエノキタケと異なっている。白っぽいい。ニガクリタケと判断して採るのをやめた。ヒラタケで十分ではないか、と。

さて、ヒラタケをどうやって持ち帰るか。かごも、袋も持っていない。いい具合に雨もやんだ。こうもり傘を開いて「かご」の代わりにした=写真。自然はいつも人間の想像力を超えて作用する。師走にヒラタケと「ラストダンス」を踊るとは、思いも寄らなかった。

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