2008年12月22日月曜日

夏井川渓谷の冬の日


V字谷の夏井川渓谷(いわき市小川町上小川字牛小川)では冬場、朝日が尾根から顔を出すのは9時前後だ。正確には、一番低いところにある無量庵に日が差し込む時間のことで、線路の上にある家ではちょっとばかり早い時間から光に包まれる。

午後は、同じく3時からまりには太陽が尾根に隠れる。とても夕日とは言えない時間帯だ。太陽が遅く出てきて早く引っ込む。なにかやろうとすれば、昼間の短さを計算に入れなくてはならない。そして、日がかげるとたちまち寒くなる。

遅い朝日が、逆に好都合のときもある。葉を落とした森に光が差し込む写真を撮りたい、となっても慌てる必要がない。9時過ぎに森に入っても十分だ。放射冷却で霜が降り、作土が凍っているときには、畑にクワなどを入れるのはお昼近くなってから。それまでは森を巡るか、こたつに入って本を読むかして待つのが一番だ。

で、いつもの散策コースを逸脱して岸辺の岩場を上ったり下りたりする。岩盤がせり出し、渓流の真ん中にいる感覚で空を仰げるところもある。砂地や泥地にはテンかイタチと思われる獣の足跡。早瀬にはカワガラス。こちらを目ざとく見つけては慌てて飛び去る。「今、ここにいるのはおれとおまえだけだよな」。そんな寂しさが支配している。

「籠場の滝」のそば、幹のように太く、竜のように曲がりくねって岩盤に食い込んでいる赤松の根があった=写真。高さがわずか1メートル前後、多くは20センチほどの赤松の幼樹も対岸の岩盤の上に生えている。葉が赤く枯れかかっているものがある。もともとが厳しい環境のうえに、文明が酸性雨をもたらした。幹のような根を張るたくましさを、はたしてどのくらいの幼樹が持っているだろう。

こうして冬至の日、いつもの倍の時間をかけて、夏井川渓谷の水辺をじっくり眺めた。遅い朝日と凍った作土のおかげである。きょう(12月22日)からは「一陽来福」を受けて日に日に昼が長くなる。寒さはこれからが本番だが、気分は日に日に明るくなる。

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