2009年2月11日水曜日

不況は細部に宿る


阿武隈の山の町の話だ。世界同時不況のアラシがひなびた里にも吹き荒れていた。いわき市レベルでは、どの企業がどのくらいリストラをしたのか、などということはよく分からない。実態が統計的な数字にかすんでしまう。

去年秋以来、経済に急ブレーキがかかっているのは、いずこも同じ。阿武隈のわがふるさとでは、師走に入ってバタバタと企業が倒産した。某メーカーの子会社でもリストラが始まった。着地点は見えない。もっと厳しい状況が待っているかもしれない、という。

倒産で職を失った人間、リストラで派遣・準社員切りに遭った人間は、分かっているだけで50人余。潜在している失業者も含めると150人くらいはいるのではないか、というのが地元の見方だ。首のつながっている正社員でも操業短縮の憂き目に遭っている。1週間のうち操業するのは3日間だけ、あとは休みだという。未曾有の事態だ。

合併して市になったとはいえ、もともとの町の人口は6,300人強。15歳以上の就労人口はどのくらいか分からない。が、そのなかで50~150人が職を失い、かなりの人数が操業短縮を余儀なくされているとなれば、影響は甚大だ。まさに、不況は細部に宿る。

個々の生活防衛策といってもたかが知れている。それでも手を打たないではいられない。例えば、理髪店。月に1回散髪していた客が1カ月半のサイクルになり、何か行事があるまで待つ――といった風に変わってきた。となれば、スナックだって閑古鳥が鳴く。

しかし、だからこそ「憂きことのなおこの上に積もれかし限りある身の力試さん」(山中鹿之助)という気持ちを持つことも大切になる。ふるさとの山=写真=はそんな人間の慟哭だけではなく、希望と克己を見守っている。

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