2009年4月11日土曜日

阿部幸洋展


いわき市平の小野美術で阿部幸洋展が始まった。パステル画を含む油絵およそ30点が展示されている。4月14日まで。

阿部は昭和26(1951)年、いわき市平で生まれた。結婚後、スペインへ渡り、現在はラ・マンチャ地方の町、トメジョソに住んでいる。スペイ在住28年。人生の半分は向こうで暮らしている計算になる。とはいえ、相変わらずいわき弁のままだ。

ラ・マンチャ地方の風景を独特のタッチで表現している=写真。家・樹木・山・大地・空と、描く対象は変わらない。が、個展のたびに微妙な変化を見せる。今回は光が表に出てきた――そんな印象を受けた。

隠れていた街灯(間接的な照明)が姿を見せて、直接光をともす。灰色の雲によって湿潤なものが加わり、そこへ夕日が当たって雲がほんのり赤く染まる。雲には動きもある。おずおずと色彩が踊り始めた感じ。

かと思えば、アーティチョークなどを描いたモノクローム作品がある。前回のいわきでの個展の際、アーティチョークの絵に触発された阿部の知り合いが実物を会場に持ちこんだ。それをもらい受け、夏井川渓谷の埴生の宿・無量庵で栽培している。今年はつぼみをつけそうだ。

阿部の作品を初めて見たのは37、8年前だった。こちらは新聞記者になりたて。阿部は19歳か20歳で初個展を開いた。それを取材して以来の付き合い。スペインに移り住んでからは、スーパーリアリズムの腕の冴えを封印して色そのものと格闘してきた。やがて画面の中に光が差し、空気が澄み、湿り気を帯びて雲が赤く染まるようになった。

いわきでの阿部の個展は漏れなく見ている。以前の個展と異なる点はどこか、といったことを基準にして作品と向き合う。今回は「彩雲」と「街灯」。そういう作品の見方をできる唯一の画家だ。

1 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

安部さんの絵の、評価、的を射てますね。見方、正しいと思います。