2009年4月29日水曜日

江戸時代の捕鯨絵巻


またまた展覧会へ行って来た。25日、いわき地域学會巡検で仙台へ。伊達政宗の祖母・栽松院(久保姫=いわき出身)の墓を詣でたあと、仙台市博物館の企画展をのぞいた。26日、福島県立美術館・ワイエス展。そして、27日。今年度最初の、いわき市暮らしの伝承郷企画展「捕鯨絵巻に描かれる町と村」=写真はポスターの一部=へ。こちらは5月17日まで開かれている。

江戸時代初期、磐城平藩を治めた内藤家伝来の「磐城七浜捕鯨絵巻」(いわき市指定文化財)が目玉だ。ハマにはクジラを追い、クジラと格闘する漁民。南北に貫く街道にはマチとムラ、山や川。黒船来航に備える海岸図もあった。

江戸時代、自分の住んでいるところはどう描かれていたのか、地名はどうだったのか。どの絵図も磁力と魅力を発している。想像力をかき立てられる。仲間と来た人は自分の生活圏と絵図を照らし合わせながら、「あそこはどう、ここはどう」と、本人と仲間と絵図との三者会談をしている。それが狙いでもあるのだろう。

初めて見る絵図が多かった。郷土史の本でよく目にする「鮫川河口漁業図」(天明3年=個人蔵)をはじめ、「菊田浦海岸図」(江戸後期=個人蔵)、わが住む「磐城郡中神谷村絵図」(江戸後期=個人蔵)などを中心に、じっくりと見た。

でも、と思う。ここは民俗学をベースにした施設で「歴史資料館」ではない。今につながる生活文化のために歴史資料を生かす、という意味では了解できるが、歴史そのものが主役になってはいないだろうか。今回は、いわきの歴史についての知識は得られても、暮らしのありようや知恵のヒントは得られなかった。

文化施設は冬の時代。カネもヒトも減らされ続けている。伝承郷の企画展も今回から有料(大人は320円)になった。北風をやわらげるのは市民のパワーでしかない。もっともっと市民のコレクションと手技と知恵を結集して、企画展を立体化すべきだろう。それこそネットワークを駆使して協働作業を進める必要がある。

0 件のコメント: