2009年6月12日金曜日

路上の死物学


時々、動物が路上で死んでいる。街の幹線道路では犬や猫、特に猫の死骸が多い。郊外ではタヌキが目立つ。堤防の上では毛虫。夏井川渓谷(いわき市小川町)でも、タヌキ、テン、ヤマカガシなどの死骸を目にしてきた。いずれも車にはねられたり、ひかれたりしたのだ。

鳥も無事ではいられない。スズメ、コジュケイ、フクロウ、ムクドリ……。翼を持っているからさっとよけられるはずなのに、と思っても、車のフロントガラスなどにぶつかって昇天する。昔に比べて車のスピードが上がっているのだろう。それだけ現代人はせわしなくなっているわけだ。

先日は、夏井川下流の堤防上でツバメの死骸に遭遇した=写真。堤防の上を行き来する車はそう多くない。スピードもそんなに出せない。果敢に、スピーディーに「ツバメ返し」をする空の特急便も、ときには目測を誤って車にぶつかり、命を落とすのか。

これからはトンボだ。夏井川渓谷では今週に入って、急にミヤマカワトンボの死骸が目につくようになった。ミヤマカワトンボは翅と胴が赤褐色、腹が金緑色をしている。美しい。このトンボが、翅を風にそよがせて路上に横たわっている。夏になると、今度はオニヤンマが車にぶつかってくる。

まだ生きているミヤマカワトンボがいた。タイヤの下敷きになるくらいなら飾っておきたい――。翅をつまんで助手席に置いたのはよかったが、車から降りてしばらくしたら姿がない。脳しんとうでも起こしていたのがなおって、開いていた窓から飛び去ったのだろう。写真を撮り損ねたのが残念。

PHP新書に川口敏著『死物学の観察ノート』がある。この本を読んで以来、夏場はいつも「死物学」なる言葉を思い出す。

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