2009年7月1日水曜日

「三病准息災」と「晴耕工雨読」


恩師がこの春、瑞宝小綬章を受章した。かつての級友が電話で連絡を取り合い、都合のつく人間だけが集まって、土曜日(6月27日)、いわきで祝う会を開いた。実行委員会のようなものをつくり、往復はがきで出欠を確認する、となると時間ばかりかかる。ここは一気呵成に事を運ぶことにした。

首都圏に住む一人が仲間への連絡役となり、欠席者には祝電を打つように頼んだ。地元の私は2次会を含む会場と宿泊先の確保、司会、その他を引き受けた。他クラスの人間や後輩なども「一本釣り」にした。

恩師は福島高専の名誉教授で、来年、傘寿(80歳)を迎える。機械工学科3期生の担任となり、学生を世に送り出してから既に40年が過ぎた。私は中退し、機械工学とは無縁の世界でメシを食った。が、おつきあいは逆に、社会人になってから深まった。

結婚して最初に住んだ老朽市営住宅の斜め前に恩師の官舎があった。一人の職業人として接してくれた。とはいえ、恩師であることに変わりはない。どこかで絶えず緊張しながら暮らした。

それはさておき、ご夫妻を囲む祝う会での謝辞=写真=で初めて恩師の近況を知った。「ならぬものはならぬ」精神をたたきこまれた“会津っぽ”なのは先刻承知だが、およそ10年前に体に変調をきたし、以来、病気と共生しているのだという。

四字熟語の「無病息災」に引っかけて、五字熟語で自分の体を表した。「三病准息災」。三病は脳こうそく・肺がん・心臓病。食事療法を主に闘病を続けてきた結果、毎晩ではないが好きな清酒を楽しめるまでに回復した。息災とは言い切れないものの、それに近い状態ということだろう。

もうひとつの五字熟語として「晴耕工雨読」を挙げた。家庭菜園だけでなく、日曜大工も好き。「晴耕雨読」に「工」を加えた。そして「読」は、戦争体験者なので主として昭和史関係の本を読んでいるという。

自然科学であれ、社会、人文科学であれ、なにか新しいモノ・コトを分析し、構想するには正確なデータが必要になる。この五字熟語に、自分の体調を、生活を客観的に把握しようという研究者の緻密さを感じた。四字熟語でお茶を濁さない、という“会津っぽ”の頑固さも。

お返しの記念品に添えられた礼状にこうあった。「旧師の栄誉への賀意、この馨しくも優しい心根、大変ありがたく感謝にたえません。まさに教師冥利に尽きる念(おも)いです」。 傘寿を囲むアラ還の胸の中を温かい風が吹き抜けた。

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