2009年7月11日土曜日

イノハナの味噌漬け


7月の声を聞くと決まって咲く花がある。クチナシ、ネムノキ=写真、ノウゼンカズラ。ネムノキは花だろうか。花とは思えない独特の形と繊細さを持つ。

道々、自生するネムノキの花を見ながら阿武隈高地の実家に帰った。その晩、兄夫婦が隣に住む独り暮らしのT子さんを食事に招いた。近くの町に住む弟夫婦も呼ばれた。私を入れて5人が食卓を囲んだ。

義姉の手料理が並ぶ。地元の食材を使ったサラダ、浅漬けなどが中心だ。イノハナ(コウタケ)入りの味噌漬けを初めて食べた。けんちん汁(トン汁)には油でいためて冷凍しておいた去年産のチチタケも。これは前に食べている。私にとっては珍味、かつ美味だ。

伝統を受け継ぎながらも、創意と工夫を凝らして今風の食べ物にアレンジする。保存食にも知恵をひねる。阿武隈高地に限らず、それぞれの地方の家庭料理はこうして少しずつ進化してきた。これからもそうだろう。

毎日では大変だが、「料理はいっぱい作らないとおいしくない」という。で、そんなときには夫婦2人では余ってしまうから、隣のT子さんのほか、近所のお年寄りの家2軒にもおかずを届ける。行政から頼まれたのかと思ったら、そうではない。近所だから――ただそれだけのこと。

昔ながらの一筋町である。昭和31(1956)年の大火事で道路が拡幅され、一部移動はあったものの、どの家も代々、同じ場所で暮らしてきた。が、核家族化が進んで、子どもたちは近くの町に家を建てた、同居していても帰りが遅い、そんなことで“孤食“を強いられるお年寄りが増えた。そういう人たちを思いやっての“おかず分け”である。

NHKの朝の連続テレビ小説は家族で食事をする、隣家とおかずを分け合うのが“決まり”らしい。都市化が進めば進むほど、現実はその逆の方向に向かう。一種のユートピアだ。

わが家のあるいわき市ではどうか。隣組の付き合い自体が薄い。むしろ“地縁”より“知縁”で、疑似孫一家が来るときだけカレーライスになる。大人4人に子ども2人。そのくらいの分量を作らないとおいしくないという。義姉の話もそうだが、家庭料理の適量は大人5人分か。

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