2009年10月1日木曜日

ノルウェーの渓谷


ノルウェーではフィヨルドのスケールの大きさに度肝を抜かれた。フィヨルドへなだれる渓谷も雄大だった。

世界で最長・最深のソグネフィヨルドを観光した。ノルウェー第二の都市、やせ細った老婆の右手握りこぶしのような地図でいえば、小指の第三関節に当たるベルゲン(旧首都)が発着地だ。

ベルゲンから列車を乗り継いで山側からソグネフィヨルド内奥部に下り、つまり渓谷の底に至り、フェリーでフィヨルドを周遊した。そのあと、バスで渓谷をさかのぼり、急斜面のヘアピンカーブから雄大な景色を眺め=写真、さらに山を越え、途中の駅から最初に乗った鉄道を利用してベルゲンに戻った。

ベルゲンと首都オスロは、日本の、いわきの感覚でいうと、磐越道ないし国道49号のような位置関係(ベルゲンは新潟、オスロはいわき)にある。新潟から中間の郡山市の北西、猪苗代湖南の方に入ってフェリーで湖を渡り、別のルートで新潟へ戻る――フィヨルドを見るためにたどったルートを、いわきに引きよせて考えればそうなるか。

北欧の4日間はこんな調子で絶えずいわきに還元して、自然を、人間を見てきた。絵はがきを見るように自然を見ることができなくなっているのは、夏井川渓谷での週末暮らしがしみ込んでいるからだ。もっといえば、哲学者内山節さんの『自然と人間の哲学』を踏まえた思考回路がそうさせるのだ。

後先が逆になったが、ベルゲン市内に入ってすぐ目に入った山がある。あちこちに「白糸の滝」ができていた。

ベルゲンでは、メキシコ湾流の影響で湿った空気が山に当たり、絶えず雨を降らせる。「1年に400日は雨が降る」と言われるほどの多雨地帯。氷河が削り取った山は、硬い岩盤だ。雨は地中にしみ込まずに岩盤の表面を流れ落ちる。即席の滝があちこちにできる。それが車窓から見えたのだった。二泊三日の西ノルウェーはおおむね雨だった。

フィヨルドへ至る渓谷でも、フィヨルドでも、滝をいっぱい見た。ちょっと晴れたら、すぐ涸れる滝もあるだろう。

ここでもフィヨルドと渓谷とに対峙するために、わが夏井川渓谷なり、背戸峨廊(セドガロ=セトガロウではない、念のため)を思い浮かべた。比較にはならないが皮膚感覚として何かを比べたくなるのだ。セドガロは福島県規模、フィヨルドは地球規模――そのことが実感できた。両方が大切な地球の自然資源だということも。

0 件のコメント: