2009年10月17日土曜日

「三春ネギ」質問へのお答え


匿名さんから「三春ネギ」についての質問がありました。「三春ネギ」については前にさんざん書いているために、どうしても説明を省略しがちになります。なにせカミサンが「また三春ネギ?」と眉を寄せるくらいですから、さりげなく、あっさりと――と心がけているのですが、それがかえって分かりにくくしているのかもしれません。

私自身の頭を整理する意味でも、質問にお答えします。まず、「三春ネギ」は、三春町でごく普通に「三春ネギ」という名で店頭に並んでいるのか、という点。答えは、たぶんノーです。

というのは、「三春ネギ」の名が通用するのは、私の知っている限りでは田村市(旧常葉町・都路村など)と隣のいわき市(川前町・小川町)だけです。小川町は夏井川渓谷の山里に限られるようです。店頭では売られておらず、自家採種による「自産自消」の地ネギです。川前町ではネギ苗を売っているという話を聞きますが、私は確かめていません。

数年前、三春町の小さなスーパーでネギ苗を買ったことがあります。そのときは「田村ネギ」と言われました。三春町では「三春ネギ」とは言わないのかと思ったものです。三春町史にも「三春ネギ」の記述はありません。近隣の町史も同じです。三春方面からそのネギが伝わって来たために、「三春ネギ」と呼ぶようになったのだろうと思います。

三春の一部は「阿久津曲がりネギ」で知られる郡山市阿久津町と接しています。阿久津は、前は田村郡に属していました。阿武隈川を基準にすると、ともに東部(右岸)に位置しています。このへんに「三春ネギ」のルーツを解くカギがあるような気がしてなりません。「三春ネギ」は「阿久津曲がりネギ」の兄弟分ではないか――現時点では、そう推測しています。

田村市では「阿久津曲がりネギ」同様、「三春ネギ」も曲がりネギにします。私もそれに倣って、夏井川渓谷では曲がりネギにします。そのために真夏(月遅れ盆のころ)、斜めに植え替える「やとい」という作業をします=写真

二番目の質問は、今では希少な幻のネギなのか、です。その通りだと思います。大事に育てて種子を絶やさないようにしたいものです。

三番目の質問は、「いわきネギ」にしろ、「三春ネギ」にしろ、地名がつくと特産ブランドになるのか、ですが、「三春ネギ」は市場に流通するような品種ではありません。昔ながらの地ネギですから、それぞれの家が種子を絶やさぬよう、細々と栽培を続けているだけです。

「三春ネギ」は長く曲がった白根も緑の葉も食します。軟らかくて香り高く甘い――私にはジャガイモとネギのみそ汁が最高です。以上、「三春ネギ」について、でした。

1 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

ありがとうございました。

ネギのルーツがわかり、興味を持ってこれから手に取るようになると思います。

野菜1つとっても、流通経路や交配の歴史・伝統など知らないだけで行き続けている事柄が多いです。すごく関心をもてました。

三春ネギの産地を見ると標高の高い高原産地に適している感じですね。高原野菜は寒暖の差で作物が育つからおいしいわけですね!