2009年12月5日土曜日

北欧メタボ


9月下旬に北欧を旅行した。何回もこの欄で書いている。旅行の前と後で何が変わったか。石の街、木の里、U字谷、フィヨルドを知り、「高福祉高負担」を受け入れる国民性を垣間見て、今までとは違う税金の使い方が日本でも始まる、という期待を持てるようになった――それはいいのだが、肉体的にも変化があった。体重が約2.5キロ増えたのだ。

5泊7日の旅。朝・昼・晩、パン・肉・魚・チーズといったものを食べ続けた。漬物は唯一、キュウリのピクルス。ピクルスを糠漬け代わりにして、ご飯がなくてもいいやと、肉などをバクバク食べた。これが体重増加の主因だろう。バイキング料理の本場だ。

スウェーデンだと、「スモールゴス ボード」。意味は「食卓(ボード)に置かれたサンドイッチ(スモールゴス)」ということか。

その国に住む同級生の家を訪ねたとき、昼に「スモールゴス トータァ」が出てきた=写真。「トータァ」の意味は分からない。要は来客用の軽食だという。生サーモンやゆで卵、トマトなどを上に飾り付けたシーチキンのサンドイッチといえばいいだろうか。ケーキのように丸くかたどったものを切り分けて客人に渡す。日本人の口にも合う。

ホテルの朝食はすべてバイキング料理。ざっと80年前にノルウェーを訪れた作家の谷譲次は『踊る地平線』(岩波文庫)に書いている。

「北の食事は奇抜な儀式をもって開始される。(略)めいめい皿とフォウクを手に、眼に異常な選択意識を輝かして勝手にとってきて食べるのである。(略)何をくらわんかと、狭い場所で堂々めぐりをはじめるのだから、何となく本能をさらけ出すようで面映ゆくもあるし、そうかと言って、厳粛に事務的であるためにはあまりに雑踏している。(以下略)」

実際、何を食べたらいいものか、毎度、気持ちは堂々めぐりをした。皿を手にして、外見はすまして、料理の広野を巡り歩く。それで食べたい以上の量を皿に盛ってしまう。しかも、満腹感は一時的。ご飯と違ってすぐ腹が減る。夜は夜でアルコールの世話になる。日中は車と飛行機、列車、遊覧船の客になるだけ。燃焼しきれないものが体内に蓄積される。

旅は非日常、と思っているから、朝、散歩に行くようなことはしない。が、海外旅行に慣れていて、外国にまでフルマラソンに出かける市民ランナー(ツアーリーダー)は、早朝のジョギング、ないしウオーキングを欠かさなかった。この男は、体重はほぼ現状維持だったろう。

会社人間のころは、50代後半に73キロ弱まで体重が増えた。それで朝の散歩を始め、夕方も散歩するようにして、2年がかりでやっと5キロ減量した。それがたった5泊7日で半分帳消しになった。日常に戻って2カ月強、体重が減るきざしはまだない。

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