2010年5月20日木曜日

緑の酸素


夏井川渓谷(いわき市小川町)の天然林はすっかり若葉に覆われた。無量庵のある小集落・牛小川が濃淡さまざまな緑のグラデーションに包まれる。夏井川渓谷のみならず、緑が一番美しい季節になった。

緑のドームの中を歩く=写真。若葉はまだ緑が薄い。光を透過する。その間接光線が優しく淡くやわらかい感じを与える。落葉樹中心の天然林といえども、夏になれば葉の緑は濃くなり、空を遮って、林内はやや暗くなる。そうなる前の、胸が躍るような明るさ。歩くだけで気持ちがよくなる。

葉が落ちて見通しのよくなる冬の天然林は、それはそれで鋭く凛としている。若葉が頭上を覆った今は、それこそ窒息しそうなくらいに酸素が充満している。この時期はいつも「緑の酸素」という言葉が頭をよぎる。

阿武隈の山国で生まれ育った。雑木林が「第二の学校」だった。雑木林の中につくられた林道は「川」、頭上の青葉は「緑の藻」。その下を、つまり林道を魚が行き来する。蝶ではなく、魚が林道を行き来する――そんな幻想を今も持ち続けている。

絵はがきを見るように風景を見る行楽客の意識ではなく、そこにある自然に包まれて暮らす生活者の意識で風景を見るとき、自分の体が風景の一部になっているのを知る。

0 件のコメント: