2010年6月6日日曜日

宇宙下着


163日の宇宙滞在から帰還したばかりの野口聡一さんが、テレビの向こうでやりたいことを聞かれ、「熱いシャワーを浴びて、冷たいビールを飲みたい」と答えていた。国際宇宙ステーションにはシャワーがない。地上の感覚では宇宙ステーションの生活をはかれないのだ。

ほぼ1カ月前に、全国紙に載っていた「宇宙下着」の記事を思い出した。若田光一さんが宇宙ステーションに長期滞在をした際、におわない「宇宙下着」を着用した。それを応用した枕カバーが発売された、というのが記事の内容だった。

とっさに草野心平が思い浮かんだ。『草野心平日記』全7巻がある=写真。それを読んで驚くことがいっぱいあった。その一つが風呂。晩年はめったに入浴しなかったらしい。

1979(昭和54)年1月1日の記述。「風呂にはいる。何十日ぶりだろう。石ケン使はず湯ブネの中でゴシゴシ洗ふ」。元日の若水を意識しての入浴だろうが、それまで何十日も風呂に入っていない。大変な75歳だ。

それから6年後、81歳の1985(昭和60)年1月1日。「百余日風呂に縁なく、元日はヒゲ剃りもなし」。百余日に1回なら、入浴は一年に3回くらいのペースだ。いよいよ宇宙的になった。どうもこの詩人は地上の感覚でとらえようとしてもとらえきれないのではないか――そんな思いが日記を読んでふくらんできた。

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