2010年9月28日火曜日

ペタコ


台湾へ行くにあたって、台湾の木・鳥・キノコ、それぞれ一種は目にしたい、と思った。木は「白千層」を記憶にとどめた。キノコは残念ながら、料理に出てきたシイタケだけ。市街では公園の芝生、山地では道端に目を凝らしたが、キノコの姿を目にすることはできなかった。

それはそうだろう。ホテルの周辺とか、観光地とか、ほんの限られた地域で植物を、鳥を、菌類を見ようということ自体、都合がよすぎるのだ。丹念に、つぶさに、ゆっくり。そういう意思と時間をもたなければ、鳥も見えてこない。キノコも姿を見せない。

鳥はそれでも何種か目にした。桃園国際空港から台北市内へ向かう途中の川にアオサギがいた。台北市内にはスズメに似た鳥もいた。ドバトは普通に見られた。が、台湾固有の鳥というわけではない。

これが台湾の鳥か――。台湾映画の傑作「非情城市」の舞台になった九份の、山の斜面に張りついたマッチ箱のような家並みの間の小道を歩いていたときだった。日本の鳥でいえばヒヨドリに近い。眼下の木に鳴きながら数羽がやってきて止まった。と、旋回して頭上の木に来た。とっさにカメラを向けた=写真。頭が白かった。

日本へ戻り、台湾の鳥を調べて、台湾に普通にいるシロガシラらしいと分かった。シロガシラは俗に「ペタコ」と呼ばれる。すると、まど・みちおさんの「蕃柘榴(ばんざくろ)が落ちるのだ」という詩に出てくる鳥はシロガシラだったか。

〈どこからかペタコもやってきて/ぴろっ、ぴろっ、と啼いては/黄色い玉を/ぽとり、ぽとり、落とすのだ〉。黄色い玉は蕃柘榴(グァバ)のこと。台湾で10歳から33歳までをすごした100歳詩人の作品が少したちあがってきた。今度の台湾行でこの鳥を知ったのが一番の収穫だったかもしれない。

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