2011年1月31日月曜日

在来作物を伝える意義


きのう(1月30日)の「昔野菜フェスティバル」の続き。山形大農学部准教授で、山形在来作物研究会長の江頭(えがしら)宏昌さんの講演「在来作物を伝える意義」=写真=を興味深く拝聴した。

なぜ在来作物がつくられてきたかを、江頭さんは四つに分けて解説した。

第一には、食料確保(特に冬季)のため。江戸時代だけでも寛永・享保・宝暦・天明・天保期に大きな飢饉が起きている。飢饉の年には穀物にカブをまぜて食べる――カブは準主食になりうる。山形県全域では20種近い在来カブがあるという。

第二は、地域を元気にするため。サクランボと言えば「佐藤錦」だが、これには100年の歴史がある。初めは人気がなかった。しかし、「こんなにかわいくてきれいなサクランボだ、人気が出ないはずがない」と生産者と苗木商ががんばってきた結果、人気サクランボになった。

第三は、楽しみの共有のため。例えば、月遅れ盆に帰って来る孫のためにつくる、といった具合。第四は、家宝・地域の宝として。よその地域から来た人間に種をもらった、あるいはよそから種を持ってきた――それを代々採種し、大切に保存してきた。

さてそこで、在来作物を伝える意義だが、江頭さんは「在来作物にはモノとしての側面と、情報媒体としての側面がある」という。「在来作物が伝えてきた情報に目を向けるべき。その価値は計り知れない」とも。

大きくは三つ。①つながり=時間・空間を越えて人・社会・産業などのつながりを再生する/地域の知的財産を次世代に伝えるメディアとなる/産業・教育・地域を活性化する②多様性=地域潜在力(地域の作物とその文化の多様性)の維持と継承が可能③地域の個性=地域らしさ(風土・歴史・文化・伝統知など)を見つける材料になる/地域の個性のシンボル(提示手段)になる。

欧米諸国および日本などは、工業化と都市化を実現することによって近代化をなしとげた。そして今、次の展開として「脱工業化」と「脱都市化」が言われている。脱工業化は「情報化社会」となり、脱都市化としては「森林化社会」が模索されるようになった。

未来学者アルビン・トフラーがいう「第三の波」、つまり「農業革命」「産業革命」の次の「情報革命」=知識(情報)経済社会の到来=だ。江頭さんはその流れのなかで在来作物を「地域固有の知的財産」と位置づける。それを次世代へ継承しよう、というのが結論だった。

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