2011年4月12日火曜日

照島無残


照島はいわき市泉町下川字大畑地内の海岸から約250メートル沖合にある。ウ(鵜)の生息地として国の天然記念物に指定されている。知人からケータイで撮った照島のかたちを見せられて、うめいた。「ソフト帽(台形)」が「とんがり帽子(三角形)」に変わっていた。

「3・11」から1カ月。4月11日朝、海岸線に沿って勿来地区災害ボランティアセンターへ出かけた。国道6号常磐バイパスならチョク(直)で行けるが、海岸を通って照島をこの目で確かめたかったのだ。

ところどころ波打ち、亀裂が入り、段差の多い「海岸道路」を南下する。豊間を、江名を、永崎を、小名浜を過ぎる。半月前に通ったときと比べて、道路沿いの光景はそう変わっていない。そんな印象を受けた。が、よく見ると道端にがれきが集約されつつある。少しずつ復旧への歩みは進んでいるのだ。

小名浜を過ぎて高台の大畑に至り、いわきサンマリーナへと下る。閉鎖中のマリーナの入り口から、ちょっと沖にある照島を見て息をのんだ。「とんがり帽子」どころではない。海面から突き出た「竜の爪」のようだ=写真。知人がケータイで撮った場所とは違うのだろう。高台に戻り、ゴルフ場のあるホテルへと移動すると、「とんがり帽子」が見えてきた。

「竜の爪」はしかし、「3・11」で一気にできたのではあるまい。すでに少しずつ崩落が進んでいた。『いわき市の文化財』(いわき市教育委員会発行)にも、近年崖が崩れて小さくなっていく傾向がある、とある。そこへ「3・11」が起きた。

方角からいえば、「とんがり帽子」は北から、「竜の爪」は北東から照島を見たときのかたちだ。『いわき市の文化財』には断崖の頂上にウがびっしり羽を休め、そこから逆三角状に生えたトベラなどの植物が見える。添付された写真は北から見た照島。知人のケータイ写真もほぼ同じところから撮っている。

「とんがり帽子」にも、「竜の爪」にも緑はない。丸裸だ。初めて外気にさらされた赤ちゃんのように、岩肌は赤みがかっている。

「とんがり帽子」には、ウは12羽しかいなかった。「竜の爪」を見ると、10羽。もっとも、照島はウの「生息地」というより「越冬地」だ。多くは春が来て北へ帰ったのだろう。――と、これは11日朝の感慨。午後2時46分には、家で1分間の黙祷をした。

その2時間半後。夕方5時16分にまた、でかいのがきた。震度6弱。「3・11」並みだ。外へ飛び出した。しかも、今度は揺れているうちに停電した。折から雷雨が暴れていた。「地震・雷・火事・津波、そして原発」。バキッ、バキッ。少し先で火花を散らす落雷を初めて見た。本などが少し落下した。照島はさらに崩落したか。

カミサンはすぐ、風呂に水を貯めた。正解だった。電気はおよそ1時間後に復旧したが、水はその前に再度止まった。いつまで神様は試練を与え続けるのだろう。

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