2011年5月19日木曜日

原発事故講演会


いわきフォーラム’90の第346回ミニミニリレー講演会が5月17日夜、いわき市平下高久の根岸集落センター(地区公民館)で開かれた。「公民館」は太平洋にほど近い田園地帯の集落の一角にある。ふだん会場にしている市文化センターが市の災害対策本部になり、一般の利用ができないための会場変更だ。

講師は、日本原子力研究所で発電用原子炉の設計・研究・安全性研究・原子炉解体などに従事した星蔦雄さん。星さんは「福島第一原子力発電所事故について――放射線の理解のために」と題して、スライドを使ってわかりやすく話した。ふだんは聴講者が10人ほどだが、テーマがテーマだけに市内各地から約45人が詰めかけた=写真

原子力発電の原理、福島第一原発事故の状況、放射線とは、放射線の健康への影響、いわきの放射線レベル、我々の今後の対応の六つに分けて説明した。

「東電は今頃になって1号機の炉心溶融(メルトダウン)を言い出したが、専門家は最初の数時間で溶融したとみていた」「放射能はベクレルで表示される。ホタルと同じ。放射性物質のなかにいるホタルが1秒間に1匹(放射線が一つ)、ピカッと光れば1ベクレル。3匹か4匹かということ。光と同じで放射線は遠くへ行けば弱まる」

「20キロ圏内を一斉に避難させたのはどちらに風が吹くかわからないため」「一般人の被爆制限値は、平常時は年間1ミリシーベルト、事故対応時は20ミリシーベルト」「いわきの測定値は、県いわき合同庁舎南側の駐車場(コンクリート)のため、土よりは少し低めになっている」

頭の中で勝手に飛び交い、ぶつかりあっていた情報が、星さんの言葉によってどんどん交通整理をされていく――聴講中、そんな感覚があった。なかでもベクレル=ホタル説が腑に落ちた。5,000匹いれば5,000ベクレルだ。

で、今後どうすればいいのか。星さんは、線源は地表に沈着した放射性物質(ヨウ素、セシウム)で、現在は安定に減衰(多量の放射性物質の放出はない)している。現状では、健康に影響の出るレベルではないので、生活は普段どおりでよい。家庭菜園の野菜などはよく洗う。屋外作業後は手や顔を洗う。土ぼこりの多いときは窓を閉める――を挙げた。

講演後には質問が相次いだ。「窓は普通の天気なら開けてもいい」、エアコンについては聴講者も加わって「今の製品は外気と遮断されている。なぜ使って駄目なのかわからない」。「東電は情報を公開していない。専門家は『けしからん』と思っている。市民の不安解消のためには情報公開が必要」と締めくくった。

講演に先立ち、「公民館」前のコンクリートの駐車場で、「はかるくん」で線量を調べた。地上1メートル、地表と数値が変化する。地面に沈着したセシウムが放射線を出し続けている。物質である以上は見えなくても「粒」として存在している。

金子みすゞの詩に「星とたんぽぽ」がある。そのなかの詩句<見えぬけれどもあるんだよ>を忘れぬことだ。

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