2011年7月4日月曜日

参考書


3月15日午後に総勢8人、2台の車でいわき市を脱出し、おおよその行き先を頭におきながら国道49号、6号と車を走らせ、夜更けになって白河市の奥の西郷村へたどり着いた。9日後の23日に帰宅するまで、実質8日間、国立那須甲子青少年自然の家で「原発難民」生活を体験した。

少しの衣類とともにバッグに詰め込んだ本が2冊。伊東達也著『原発問題に迫る』(2002年刊)と、寺内大吉著『法然讃歌』(中公新書、2000年刊)だった。

伊東さんはいわき市議、福島県議を務めた共産党員だ。新聞記者と市議として向き合い、飲み会を企画する友人の計らいでときどき酒を飲みながら議論をしてきた。こちらは「無思想の思想」の持ち主。主義主張は異なるが、人格的には私が今まで出会った人間としては最上・最良の人物だ。

そんなこともあって、伊東さんは自費出版をすると本を届けてくれる。必ずしもいい読者ではない。『原発問題に迫る』もはっきり言って、“積ん読”状態だった。

が、今回は3月6日に平・高久公民館でいわきフォーラム‘90が主催し、佐藤栄佐久前知事の講演が行われたばかりだった。それで、講演の中身「ベクトルを変える、うつくしまふくしまと五つの共生」を咀嚼するために、『原発問題に迫る』を座右に置いた。『法然讃歌』も、今年が法然大遠忌800年というので読み始めたばかりだった。

避難先で二つの本を熟読した。なかでも、『原発問題に迫る』は何度も読み返した。原発の、原発立地自治体の問題、あるいは東電、国、県の安全に対するいい加減な対応が理解できた。原発に関する最初の参考書になった。

きのう(7月3日)午後、わが行政区の中神谷南区で伊東さんを講師に、「放射能と原発」の学習会が開かれた=写真。ここは話を聴かないと――。専門家は風のように来て、話して、風のように去るが、伊藤さんは同じいわき市の住民だ。困難を生きる同じ市民の目線で分かりやすく現実を話してくれた。

質疑応答も時間をオーバーして続けられた。住民はそれこそ必死の思いで質問する。細かい話はともかく、恐れや不安をかかえながら暮らすしかない、いわきには住めないと考えた人がいるとしても、知らない土地で暮らすことのリスク、家族が離散するリスク、仕事が得られるかどうかのリスクなどがある――といった話は、現実的で、納得できた。

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