2011年9月9日金曜日

秋の虫たち


エンマコオロギで始まった虫の音楽は、今やアオマツムシが主役になった。かぼそいエンマの「コロロ」が、やがて歯ぎしりをするような「ギギギ」に変わった。日が暮れると、庭の木の上から音が降ってくる。一匹や二匹ではない。「斉唱」、いや耳をふさぎたくなるような「大乱唱」だ。

在宅ワークで気づいたのだが、一日、セミの声にさらされていると頭がおかしくなる。仕事ができない。うんざりして昼寝をするだけ。でも、眠れない。それが8月。

次に9月の夜になると、今度はアオマツムシの「大乱唱」だ。ますます仕事ができない。焼酎をやるしかないではないか。それが、9月の初めのわが家の常態。

9月8日、夜9時40分。客人が来て、酒を飲んで帰った。アオマツムシもちょっと前に沈黙した。すると、次にはチチチイ、チチチイと鳴いている虫が一匹いる。深夜になると、今度はカンタンが鋭くキリリ、キリリと鳴きだす。

わが家は低気密の開放系住宅。放射性物質が室内の至るところに付着しているという自覚がある。だから、孫は来てもすぐ帰る。代わって、虫たちは好き勝手に出没する。コオロギが飛んで来る。ゴキブリが走り回る。

ある日の日中は、アブまでやって来た。アブは清流の産物だ。なぜ汚れた水しかない神谷あたりに現れたのか。いや、神谷の山裾を縫う小川江筋、ここはまだ清流的な環境が残っていて、アブも発生するのか。そこから来たのか――と思いつつ、それはないだろうなと別の私がいう。

とぼけた三角顏がなつかしくなった。カマキリ=写真=だ。夏井川渓谷の無量庵に濡れ縁がある。そこに座って対岸をながめているうちに、同じ濡れ縁でじっとしているカマキリに気がついた。獲物を待つ狩人・カマキリ、その顔がなんともいえず気に入っている。

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