2011年11月26日土曜日

森の奥へ


夏井川渓谷では幹線道路の県道がそのまま遊歩道になる。それともう一つ、対岸にも遊歩に適した小道がある。水力発電所の導水路に沿って巡視路が伸びている。無量庵へ行けば、決まってこの道を籠場の滝付近まで歩く。往復ざっと40分の散策コースだ。とはいえ、3・11以後、すっかり足が遠のいた。

無量庵へ出かけて対岸へ渡ってもすぐ引き返す。地震による落石と、森に降った放射性物質が心理的なブレーキになっていたのは間違いない。先日、それこそ8カ月ぶりにいつもの散策コースを往復した。

夏井川渓谷には小集落が点在する。無量庵のある牛小川から下流側には椚平、江田。これは小川町分。上流は川前町だ。

江田で水力発電所がらみの災害復旧工事が行われた。対岸の森の中に「夏井川第一発電所2号沈砂地」がある。その排砂路側壁復旧工事だった。工事をするために県道から川岸まで仮設道路をつくり、さらに対岸へと吊り橋を架ける=写真。こちらの工事の方が大変だったのではないか。

災害復旧工事を告げる標識から、森の中は3・11の東日本大震災でかなりダメージを受けたのではないか、という認識はあった。

沈砂地とつながっている導水路のそばを奥へ、下流と進む。二つほど異変に気がついた。立ち枯れた赤松の巨木がある。こずえから幹へとだんだんに欠け落ちていたのが、さらにくずおれて“背丈”が短くなっていた。3・11に揺すられて折れたか。

最初に出合う沢は交差する導水路の上から本流へと滑り台のようにコンクリートで固められている。のり面がえぐられ、土嚢が積み重ねられていた。こちらは9月の台風による大雨の影響か。

森の中の異変は、木々にさえぎられた対岸からはわからない。森に分け入って初めて変化を知るということになる。尾根から続く緑の斜面にところどころ白っぽい剥離跡が見られる。3・11に小規模な落石がかなりあったことをうかがわせる。

足元のキノコは、倒木にヌメリツバタケと思われるものが少し出ていただけだった。毎年今ごろ、ヒラタケが発生する倒木がある。とろけたあとはない。チェックが早すぎたようだ。

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