2011年12月31日土曜日

被災ピアノ


津波被害に遭った豊間中のグランドピアノが今夜、NHKの紅白歌合戦に登場する。25日、TBSが展開した「報道の日」特番でも披露された=写真。そのまま東京で調律作業が進められているという。

3月11日、卒業式を終えたばかりの豊間中が津波に襲われた。5月22日、前PTA会長らが「校舎を清掃しよう」と呼びかけると、OB・在校生ら300人が集まった。世代を超えて校舎内のがれきや砂を片づけた。体育館の片隅におかれたピアノを誰かが弾くと、音が鳴った。ピアノは生きていた。みんなで校歌をうたった。

昔の若い記者仲間らがいわき市海岸保全を考える会から『HOPE2』を出した。最初は写真集。第2弾は「東日本大震災いわき130人の証言」。被災時の手記と聞き書きからなる。10月下旬に発行された。直接、本人がわが家に届けてくれたのだが、紹介が遅れて今になった。上記のピアノの話も、『HOPE2』に載った前PTA会長の聞き書きから引用した。

震災以後、ときどきわが家にやって来るようになった豊間の旧知の大工さんが、その前PTA会長だ。校舎やピアノのことは早い段階から聞いていた。心を一つにするための清掃作業にしたい――やると決めたら、早い。大工さんらしくあっという間に段取りを決めて実施した。

話は変わって――。今年後半、『HOPE』のように寄贈を受けた雑誌・書籍がある。農文協からは「現代農業」10月号と、カメラマン大西暢夫さんが岐阜新聞に連載した「東北沿岸600キロ震災報告」をいただいた。大西さんは農文協の雑誌の仕事もしている。

「現代農業」10月号に、いわきの「ineいーねいわき農商工連携の会」の北瀬幹哉さんが、放射線量低減のための「草とり土とりプロジェクト」を始めたことを書いている。そのことは伝えておかないといけない。

12月11日に東京で行われた「Listen!いわき」では、中野民夫さんから自著の『ワークショップ――新しい学びと創造の場』(岩波新書)、子島進さんから編著の『館林発フェアトレード』(上毛新聞社刊)の恵贈にあずかった。この場を借りてお礼を申し上げる。

さて、紅白歌合戦だ。今年は豊間中の被災ピアノが紅白歌合戦に出るというので、水面下では11月から盛り上がっていた。同じ福島は郡山出身の西田敏行さんが出る。持ち歌の「もしもピアノが弾けたなら」のときに使われるのではないか(歌はあとで「あの街に生まれて」と発表された)……と。実際には白組司会・嵐の桜井翔クンが弾く。

よみがえったピアノの音色に鎮魂と希望を重ね、別れと再会と新しく出会った人々に感謝しながら、今年最後の夜を静かに過ごそうと思う。

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