2012年1月22日日曜日

新基準


夏井川渓谷に住む知人がひょっこり顔を見せた。「待ち合わせの時間までちょっとあるから」という。街で事業所を営んでおり、わが家の近くに用事があってやって来た。髪の毛は白いけれども突っ立っている。オニグルミの葉痕=写真=を連想させる(というのは言いすぎだが)。

知人の家は字牛小川の隣の小集落にある。森の中の一軒家である。休日にわれら夫婦が無量庵にいると、夫妻でたまに現れる。「最近、(無量庵に)来てないね。いつ行ってもいないものね」。このごろは日曜日に行けず、行っても平日、しかも行く間隔がのびている。一昨年あたりからそんな傾向にあったが、3・11後はそれが顕著になった。

溪谷の放射線量に話が及んだ。知人の家のウッドデッキは能舞台になるくらい広い。飲料水は井戸水。ウッドデッキを直すという。古くなったのと放射性物質が付着しているのが理由だ。

口に入るものは? 小名浜に開設された放射能市民測定室でいろいろ測ったらしい。柑橘類とキノコの数値が高いそうだ。ナメコは1キロ当たり500ベクレルを超える。井戸水は17ベクレル。「新基準では飲めない」という。

年末、厚生労働省の審議会で食品に含まれる放射性物質の新基準が了承された。4月から適用される。①一般食品は1キロ当たり500ベクレルから100ベクレルに②飲料水は200ベクレルから10ベクレルに③乳児用食品は50ベクレルに――といった具合。

知人は自前で井戸を掘った。無量庵の飲料水は隣の東北電力社宅跡の井戸から引水して利用している。洗面台の水道管が凍結・破損したため、ポンプの電源をオフにした。春に修理するまで水は飲めない。水道管がなおったら一度、水を測定にかけてみようと思う。「アレクセイの泉」であってほしいが、そううまくいくかどうか。

広大な森の木々の枝葉に放射性物質が付着し、それが雨とともに落下し、地上にたまり、あるいは地中に浸透して地下水に影響を与えるようになった。浪江の砕石ではないが、どこになにがあってどうなるか、それがわからないのだ。知人は自宅そばの竹林の伐採を決めた。

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