2012年1月29日日曜日

気流を読む


いわきフォーラム’90の第359回ミニミニリレー講演会「かもめの視線――いわき沿岸津波被害の記録」が1月26日、いわき市文化センターで開かれた。講師は空撮家の酒井英治さん。塩屋埼灯台の再点灯にからめてその話を27日に紹介した。

酒井さんが3・11前と後に空撮したいわきの沿岸の映像を見ながら、気分はすっかりカモメのジョナサンになっていた。「山飛び」と言われる、上昇気流を利用したパラグライダーの話ではトビの気持ちになった。

パラグライダーがなぜ空を舞えるのか。トビと同じく上昇気流を利用するからだという。上昇気流にのってらせん状に高く舞い上がり、降下が始まると次の上昇気流を見つけてまた、らせん状に舞い上がる。ベテランは、見えないけれどもそこにある上昇気流を次々につかんで、長く飛び続ける。初心者はそれができないからすぐぽしゃる。

酒井さんはパラグライダーから入って、今はモーターパラグライダーを操る。気流を読む――とにかくそれが最も大切なことらしい。

ぽっかり雲が浮かんでいるとする=写真。それは上昇気流のなれの果てだ。雲の下に上昇気流がある。山にぶつかった気流は山の三倍の高さまで上昇して下降する。危険だ。そんな視点で雲を、気流を考えたことがあったろうか。雲底は平ら、といったことも含めて、想像力が刺激された。

美しかったいわきの海、津波で壊滅的な被害を受けた浜、更地と化したその後の浜……。カモメやトビでさえ眼下の風景の激変を悲しみ、嘆いたことだろう。忘れてはならないいわきの海の「原風景」を、ちゃんとした映像として残してくれた。貴重なことだ、ですますレベルではない。それ以上に大切ないわきの財産(記録)になった。

そして、もう一つ忘れてはならないこと。いわきの北端・久之浜の一部は福島第一原発から30キロ圏内に入る。久之浜の上空から見ると、事故の起きた原発はすぐそこにある。「危機感を持ってほしい」。鳥の目が見た空からの警告である。

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