2012年2月14日火曜日

餓鬼堂横穴群


平・薄磯地区は3・11の大津波で壊滅的な被害を受けた。死者・行方不明者も126人と、いわきで一番多い。その海岸の北端、字北ノ作の海食崖に「餓鬼堂横穴群」=写真=がある。近くには小さなやしろの「安波(あんば)大杉神社」も鎮座する。やしろは無事だった。

いわきの浜は、崖と砂浜が連続している。「いわき七浜」はそういう地形的な特色を伝える呼び名で、浜がたくさん(七つ以上)あることを意味する。

「餓鬼堂横穴群」は今も発掘調査の過程にあって、3・11のときには6次調査が終わったばかりだった。第7次の平成23年度も12月5日から今年の1月18日まで調査が行われた。その発掘速報展がいわき市考古資料館で開かれている。

これまでに調べた横穴は31基で、①鉄製武具や馬具・工具、勾玉(まがたま)・ガラス製小玉などの副葬品②土器・人骨③家形構造を持つ装飾横穴――などが発見された。

この崖では県営の治山事業が行われている。調査は記録保存が目的だ。調査が終わったところから型枠をつないだ防壁工事が行われる。

3・11のときに「横穴に駆け上がって助かった人がいる」という話を聞いた。あの急斜面を? 事情をよく知る薄磯の人が教えてくれた。

3・11にはまだ発掘調査のための仮設階段・足場が残っていたらしい。そこへ孫を抱えた男性が駆け上がった。津波が押し寄せた。人が流されていく。右腕に孫を抱え、左手は手すりを握っているので、助けようにも助けられなかった――そういう話だった。

とっさの判断が生死を分けた。これからぽっかり穴のあいた崖を眺めるたびに、そのことを思い起こすのだろう。

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