2012年4月3日火曜日

かやぶき母屋解体


夏井川下流域の平菅波地区に古い神社がある。大國魂神社という。本殿が立つ鎮守の森があり、ふもとに宮司の山名隆弘さん、禰宜の息子さんそれぞれの居宅がある。かたわらで、かやぶきの母屋が圧倒的な存在感を放っている。

この母屋は一時、いわき地域学會の役員会の会場になった。終われば、囲炉裏を囲んで一献――ということもあった。

東日本大震災で神社や居宅が被害に遭い、母屋も「半壊」の判定を受けた。母屋は江戸時代から300年余の歴史を持つ。磐城平藩を治めた内藤家の一人、松尾芭蕉のパトロンだった露沾公が神社を訪ね、母屋の奥座敷を使ったという伝承もある。歴史的建造物だ。が、震災で傷めつけられ、いかんともしがたくなった。

「むざむざ重機の破壊にまかせてはならない」(山名さん)。古建築史家の一色史彦さん(土浦市)のアドバイスもあって、母屋の解体材はアクアマリンふくしまに寄贈され、そこに移築復元されることになった。

つまり、いったん「三百年余の使命を完遂して、一切を丁寧に解きほぐすこと」になった。そのための工事安全祈願祭がおととい(4月1日)午前、母屋前で行われた=写真

一色さんがあいさつした。「言葉に言霊(ことだま)があるように、家にも家霊(いえだま)がある」。いかにも家霊がこもっていることを実感し得るかやぶきの母屋だ。それが解体され、縁あってアクアマリンの一角で活用されるという、まれな例を胸に刻んだ。

1 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

以前定期開催されていました「三楽塾」で教えを受けていた懐かしい場所です。震災で被害を受け解体されるとのこと。知りませんでした。とても残念です。