2012年4月16日月曜日

春日様


夏井川渓谷の小集落・牛小川を護る小さな神社が森の中にある。春日神社、通称「春日様」だ。アカヤシオの花=写真=が咲くころを見計らって、日曜日に祭礼が行われる。集落の各家から1人が出てお参りをし、おととしから定宿になった溪谷唯一の旅館で「なおらい」をする。神主が来てお祓いをするわけでもない。参拝・なおらいだけの地味な祭礼だ。

今年はきのう(4月15日)、行われた。去年は3・11と原発事故の影響で祭礼が中止された。2年越しの祭りになった。

集落は実質8戸。これに週末だけの半住民である無量庵の人間(私)と、マチに家をつくって移り住んだ人間を加え、10戸の代表が顔をそろえた。

「春日様」は武運長久の神。戦争中はお参りに来る人が絶えなかった。「お参りに来た人はみんな生還している」と、前に聞いた。

渓谷は、尾根が二重、三重になっている。重畳としたV字谷で、谷から尾根へとアカヤシオがピンク色の花をつけると、壮大な点描画ができる。最初の尾根までが満開になった。渓谷全体から見れば三分咲きだ。厳冬のために例年よりは1週間ほど開花が遅れた。

「春日様」のやしろのなかで、みんなが3・11を振り返った。「春日様」は戦争どころか、災害からも守ってくれるのだという。東日本大震災では、集落への幹線道路が落石のために通行止めになった。一時、迂回路の通行を余儀なくされたが、集落そのものは被害が小さくてすんだ。春日様に感謝し、アカヤシオに乾杯する静かな一日になった。

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