2012年7月8日日曜日

斜め堰


夏井川渓谷へ向かう途中、平野部の小川町三島地内で水面が鏡のように滑らかな川に出合う。磐城小川江筋の取水堰(ぜき)がある。今からざっと350年前の江戸時代前期に築造された。夏井川のカーブを利用した多段式、木工沈床の斜め堰で、七段の白い水の調べが美しい=写真

被災者向けのある情報紙(月1回発行)に、いわき市内の名所・旧跡や公共施設などを紹介するコーナーを与えられた。野口雨情記念湯本温泉童謡館、市フラワーセンターの次にこの「斜め堰」を取り上げることにした。

ふだんは川に沿う国道399号を往来するだけだが、“取材”のために車を止め、そばの三島橋の上からしばらく斜め堰の水の調べを眺めた。目が喜び、次に心が穏やかになっていく。それがわかる。昔から好きないわきの景観の一つである。

この堰を研究した専門家は論文で「約300年以上にわたり大規模な改築もせずに、その機能を十分に果たし、自然景観と調和した美しいたたずまいを醸している」と高く評価している。

この堰から学ぶべきことは、と専門家はいう。「河川横断構造物の設計にあたり、その位置での河川の流れの特性を見極め、洪水という流れのエネルギーに立ち向かうのでなく、流れに逆らわないやさしい流れを作る視点であるように思われる」。<身の丈の技術>という言葉が思い浮かぶ。

ここを起点にした用水路は終点の四倉まで全長30キロ。いわき市北部の夏井川左岸の水田約970ヘクタールを潤している。堰のすぐ上流には冬、ハクチョウやカモたちが飛来する。冬もときどき、ここに立ち止まる。

1 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

すぐ隣がおばあちゃんの家です。
私も癒されています。
幼い頃はこの川で鮎をつかみ取りしました。
水も透き通りきれいです。