2012年7月21日土曜日

「弟が町長なんだ」


岩手県大槌町の、この1年を追った朝日新聞・東野真和さんの『駐在記者発 大槌町震災からの365日』(岩波書店)=写真=を読む。あの日、町民の1割近く、そして町長以下、町役場の幹部職員が大津波に命を奪われた。行政機能はマイナスになった。そこからの再出発をつづっている。

7月初旬、いわきのアリオスで<佐藤栄佐久+開沼博 「地方の論理」公開講演会>が開かれた。呼びかけ人は栄佐久元知事の、主にJC(青年会議所)時代の仲間とお見受けした。いわき市内各地から見知った人たちが詰めかけた。

小川からも数人が連れ立ってやって来た。その一人、商工会長の碇川寛さんが私に「大槌情報」を伝えた。「弟が町長なんだ」「エッ、町職員だった人ですよね」「そう」

昨年4月に町長選が予定されていた。が、大津波が襲った。町長不在のままでは再生がおぼつかない。なんとか準備を整え、8月に選挙が行われた。反町長派で3・11前から出馬を決めていた元総務課長の碇川豊さんが当選した。「碇川」という名字がなんとなく頭に引っかかっていた。商工会長の「大槌情報」がピンときたのはそのためだったか。

大槌町のHPをのぞく。町長の顔写真が載っていた。いわきのお兄さんによく似ている。声質も同じかもしれない。

いわきとのつながりは、町長だけではない。町役場は今年1月、人手不足のために前倒しをして職員6人を採用した。最年長の男性(52)はいわき出身だ。IT企業からの転進だという。東野さんの本には、いわき出身であることは書かれていない。が、「震災後、『人生もう一仕事』と志望した」とある。その意気やよし、だ。

大槌の小学校の女性校長さんたちにもエールを送りたくなった。「被災した四小学校は、すべて女性校長。『四姉妹』を自認する。赤浜小学校は『長女』。福島大出身と福島出身という『福島つながり』で、以前から親睦を深めていたという」。安渡小の校長さんは、原発事故の影響で全町避難を余儀なくされた双葉郡大熊町出身だとか。

東野さんの本から、大槌町と福島・浜通り・いわきの、人と人とのつながりを知った。知った以上は忘れないでいよう。いわきでプロの画家になった松田松雄と、出身地の陸前高田市は切り離せない。それと同じように。

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