2012年10月19日金曜日

酔いどれレリーフ


アンコールトムだったと思う。壁面に展開する精緻なレリーフを、若いカンボジア人の観光ガイドが日本語で説明するのを聴きながら見て回った。庶民の生活を描いたもののなかに、酔っ払いの図があった。一人がラッパ飲みをし、一人が嘔吐している=写真

これはいい。思わずカメラを向けた。アンコールトムは11世紀後半につくられたと、物の本にある。人間と酒の関係は900年前も、いやその前、人類が現れたときから全く変わっていない、と思う。

なにかの神事に飲み、うれしいことがあれば飲み、いやなことがあれば飲み、悲しければさらに飲み、それ以外のときにもやはり飲む。要するに、人類は飲まないではいられない存在なのだ――というのは、呑兵衛の言い訳だが。

酒を飲んでいっとき、いい気分になったつもりになる。いい気分になり過ぎると吐いたり、二日酔いになったりする。「快楽のあとの頭痛の朝」は誰もが経験する“現実”だ。そのたびに、サルでもできる反省をしてきた。年に数回、それを半世紀近く……。レリーフはきっとそんな人間の弱さを戒めているのだろう。

世界遺産を見てきてからほぼ1カ月しかたたないのに、何度かレリーフと同じような状態になった。ラッパ飲みも、嘔吐もしないのに、人と飲むと翌日まで酔いが残る。『酔いどれレリーフ』を思い浮かべながらも、しかし、いややはり晩酌なしでは一日を締めくくれない。

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