2012年11月28日水曜日

光のさくら


いわき駅前大通りのケヤキ並木に「光のさくら」が咲いた=写真。夕方の4時になると、ソメイヨシノの花のかたちをしたLED電球に光がともる。光の印象は青みがかった、淡い紫色だろうか。

双葉郡富岡町にある夜ノ森公園はソメイヨシノの名所。春になると、いわきからも夜桜の下で一献を、というグループがあって、誘われたことがある。

都合がつかずに夜桜は見そびれたが、日中、満開の桜のトンネルの中を、車を走らせたことはある。規模が半端ではない。後年、ソメイヨシノの苗木を植え続けた一人の人間の思いが、公園に結実したことを知る。

ソメイヨシノは江戸時代後期、人間が作り出した桜だ。西行が愛した桜は、言うまでもない。山桜。明治になって、急速にソメイヨシノが普及した。戦争に勝つたび(日清、日露)、記念樹として各地に植えられた。寿命は100年前後らしいから、今はどうなっているか。

西行は「ねがはくは花の下にて春死なんそのきさらぎの望月の頃」と詠んだ。それは、自然と人間の関係がそこなわれずにすんだ時代、公害がどうの、地球温暖化がどうの、原発事故がどうの、と考えずに済んだ900年も前のことだ。

「桜の花の下にて春死なん」などという旅人のことばは、福島県の浜通りにはいらない。いつかは「桜の下にて春生きん」、その祈りを照らし出す「光のさくら」だ。双葉郡から避難している人たちを知るにつけ、そんな思いが強くなってくる。

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