2012年11月4日日曜日

奇観「タ・プローム」


アンコール遺跡群の一つ、「タ・プローム」は超現実的な奇観で知られる=写真。ガジュマルの一種、スポアン(榕樹)の根が遺跡のあちこちに絡みついているのだ。その奇観ゆえに冒険映画のロケ地にもなった。

そうなったのにはわけがある。物の本によれば、9世紀から13世紀にかけてカンボジア王国の都(アンコール)には大小さまざまな神殿・僧院・王宮などが建てられた。たとえば、ワットは12世紀前半、タ・プロームは12世紀末~13世紀初頭。都はその後、シャム(タイ)のアユタヤ王朝の攻撃を受けて荒らされ、放棄される。

人の手で維持・管理がなされなければ、石造建築物といえども本来の自然(密林)に覆われる。19世紀、フランス人の博物学者によって密林に沈んだ遺跡群が発見されるまで、300~400年がたっていた。スポアンの種が遺跡に芽生え、根をのばし、壁面を締め殺しながら屹立するには十分すぎる時間だ。

つきっきりのガイド(カンボジア人)が日本語で説明してくれた。朴訥な青年で、やや発音が怪しい。大蛇のように根を張り巡らした木を「スポアン」といっているのだが、私には「スッポン」としか聞こえなかった。

くらいついたら離さないほど根が深い「スッポンの木」というのは冗談だが、この大樹を「ウドの大木」だとも言った。なぜ? 大きくなると幹が空洞になる、つまり有効利用ができない、ということなのだろう。

自然と人間の関係が壊れればどうなるか――。原発避難を強いられた町村では、家や田畑が放置されている。田畑は人の手が加わって初めて田畑の機能を維持し、美しい景観を保っている。それが荒れてさびしい自然に帰りつつある。タ・プロームの「奇観」を見ながら、そのことをどうしても考えてしまうのだった。

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