2012年12月27日木曜日

本のお見舞い


知人がわざわざ書店から本を買って持って来てくれた=写真。向田邦子著『眠る盃』(講談社文庫)は持病が亢進する前に、一志治夫著『宮脇昭、果てなき闘い』(集英社)は亢進した後に。

『眠る盃』には、草野心平が開いたバー「学校」にからむエッセー「新宿のライオン」が収められている。知人は心平研究家でもある。私も、周辺の人々の話題を含めて心平には興味がある。

『宮脇昭、――』は旧著『魂の森を行け 3000万本の木を植えた男の物語』の新版だ。こちらは病気見舞いだという。著者が大幅に増補・加筆して新版としたのは、84歳の宮脇さんが東日本大震災後、「森の防潮堤」構想を提唱し、「これが自分の最後の仕事」と多くの時間を割いているからだろう。

同構想は「大量に発生した瓦礫をマウンド(盛土)の中に沈め、その上に照葉樹の森をつくろう」というアイデアだ。照葉樹はタブノキやスダジイ、アラカシ、シラカシなどで、タブノキは東北の海岸部にも自生する。宮脇さんのいう「ふるさとの木」(潜在自然植生)だ。

わが家の近く、国道6号常磐バイパス終点に「草野の森」がある。2000年3月、宮脇さんの指導でタブノキなどのポット苗が植えられた。「ふるさとの木によるふるさとの森」再生事業だ。その12年後の、若く元気な姿を目の当たりにしているので、「森の防潮堤」構想には関心がある。瓦礫を処理する、いや生かす名案ではないか。

が、環境省は「一般廃棄物」の瓦礫をマウンドに埋めることをよしとしない。林野庁の管理する国有林での実施も難しい。そうしたなかで、液状化被害に見舞われた浦安市では「森の防潮堤」づくりがスタートした。岩沼市でも「千年希望の丘」プロジェクトが始動し、岩手県大槌町では「千年の杜」植樹会が行われたという。

「いまや宮脇の提唱する『瓦礫を活かす森の長城プロジェクト』には実に多くの心ある人々が共感し、あるいは関心を示している。実際9000万本必要とされる幼苗のために、東北地方でタブノキの種やカシ、シイのドングリを拾い、植え、苗を育てているボランティアは何百人もいるのだ」

この市民の力こそが「縦割り行政の壁を乗り越えて、前へ前へ突き進む」(本の帯)復興の真のエンジンになる。

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