2013年1月9日水曜日

自然享受権


スウェーデンやフィンランドなどの北欧諸国には「万人権」というものがある。その土地の所有者や生態系に損害を与えないという条件つきながら、だれでも他人の土地に立ち入って自然環境を享受できる権利のことである。

一般の書物では、「万人権」というより「自然享受権」という言葉で紹介されている例が多いようである。具体的には夏のベリー摘み、秋のキノコ狩りをはじめ、ハイキングやスキー、水浴、釣り、野営などがそれに当たる。

原発事故が起こる前はいわきでも、市民は春の山菜採り、秋の木の実・キノコ狩り=写真(2010年秋、いわきキノコ同好会の観察会)=を楽しんできた。

ところが、放射性物質によって自然も、人間も少なからぬ影響を受けた。山菜好きや愛菌家は今も、山野に分け入り、緑の酸素を吸い、自然の恵みをいただくことができない――という精神的苦痛を強いられている。

いわき市某支所管内の、2012年4月20日~11月30日までの測定データがある(単位はベクレル/㎏)。

イノシシ肉3540、クリタケ2246、ハツタケ1432、イワナ1233、サクラシメジ1163。これがワースト5で、以下コウタケ1019、アカモミタケ923、シイタケ542、クロカワ303、アカヤマドリタケ290、タケノコ251、コシアブラ237などと続く。マツタケも100を超えた。

野生キノコを採って食べるだけの人間はともかく、自分のシロを巡って採取・出荷するマツタケハンターは、精神的苦痛のほかに経済的損失を被ったに違いない。ゆえに、自然享受権に基づく損害賠償もありではないか――年頭、キノコ好きの人間はストレスが高じてそんなことに思いをめぐらすのだった。

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