2013年10月24日木曜日

イワシの行列

小名浜のアクアマリンふくしまで、久しぶりに生きた魚を見た。イワシの群れ=写真=に出合って、すぐ思い出した書画がある。

8月28日から9月8日まで、北茨城市の天心記念五浦美術館で無料のキルト展と書画展が開かれた。キルトは地元・茨城県常陸太田市の女性の作品、書画はいわき市の菅原吾法さんらの作品(掬墨画塾同志展併催)が展示された。キルトが目当てのカミサンを車に乗せて、最終日に出かけた。

「稚魚行列」と題された菅原さんの横長の書画は、今思えばイワシに似た小魚の群泳図。画面左の方へと魚たちが一斉に泳いでいるリズミカルな構成だが、中に1匹だけ反対向きの魚がいる――と、作品の下に張られた紙が種明かしをしていた。

たまたま知り合いのカップルが見にきていて、3人で目を凝らしたが……。10分がたち、20分がたっても探し当てられない。作者本人に教えてもらって、やっとわかった。「子どもは簡単に見つけますよ」。「星の王子さま」ではないが、とっくの昔に「ゾウをのみこんだウワバミ」を「帽子」と見誤る大人になっていた。ぐうの音(ね)も出ない。

「稚魚行列」の寓意は「大勢に順応しない」「わが道をゆく」、あるいは「人と違ったことをする」といったところだろうか。

わが道をゆくイワシがいるかと目を凝らしたが、実際にはだれが指示するわけでもないのに、そろって旋回・反転、上昇・下降を繰り返している。シンクロナイズドスイミングだ。秋空を群れ飛ぶムクドリも同じようにシンクロする。隣の個体とだけいつも同じ距離を保つ、というメカニズムが生まれつき備わっているのだろうか。

3階オセアニックガレリアには「俳句の季(とき)コンテスト」の入選作品が展示されていた。タイミングよく、夕刊に記事が載った。そこから最優秀賞のひとつを引用する。「冬空にアザラシの子の宙返り」。魚が水中を飛び、鳥が空中を泳ぐ――しばし少年の心に帰って夢想を楽しんだあとだったので、句意がよく理解できた。

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