2013年11月22日金曜日

Nさんの曲がりネギ

紅葉シーズンになると、週末、JR磐越東線江田駅近くの県道沿いで田村郡小野町の農家Nさんがネギと長芋を直売する=写真。江田駅直下にも焼きそばなどのテント村ができる。地元の農家のおばさんたちも露地で野菜などを売る。

人が集まれば市(いち)が立つ。物の交換・売買が始まる。品物を載せる見世(みせ)棚が発展して店になる――そんな原形を見るような、晩秋の峡谷のにぎわいだ。

山が赤く染まり出すころ、冬ネギの収穫・出荷が始まる。Nさんのネギは曲がりネギだ。「阿久津曲がりネギ」として知られる郡山市阿久津町からネギ苗を調達する。4年前の会話を思い出す。

「この曲がりネギは『三春ネギ』?」と私。「そうです、小野町でつくってますけどね」。「『阿久津曲がりネギ』と『三春ネギ』は同じだと思うんだけど」と私。「そうです、阿久津からネギ苗を買って来るんですよ」

伝統野菜の「三春ネギ」は、加熱すると甘くやわらかくなる。「阿久津曲がりネギ」もそうだ。白根も青い葉も甘く、やわらかく、とろみがある。須賀川にも曲がりネギ(源吾ネギ)がある。こちらも加熱すると甘い。やわらかい。風味もある。とろみは、「阿久津曲がりネギ」ほど濃厚ではないが、さっぱりしている。

「三春ネギ」は夏井川渓谷の小集落・牛小川で栽培されている。わが隠居(無量庵)に小さな菜園を開いたころ、住人から苗と種を分けてもらい、3年ほど失敗を重ねながら、やっと自前で採種・播種ができるようになった。冷蔵庫で種を保存するようになってから、発芽が安定した。いわきの平地では春に種をまくが、三春ネギは秋にまく。そこが一番の違いだ。

今年は三春ネギの栽培に失敗した。前にも一度、失敗している。週末だけの菜園だから、手をかけられる時間が少ない。3・11後は、役員をしている行政区の仕事が忙しくなって、さらに足が遠のいた。原発事故に意欲がそがれたことも少しはある。

間もなく無量庵の全面除染が始まる。庭では菜園を含め、土のはぎとり・客土が行われる。すべてはそれが終わってから、“新規蒔き直し”だ――Nさんの曲がりネギを口にしながら、わが三春ネギの再生を心に刻まないではいられない。またまた牛小川の住人の隣人愛にすがってのことだが。

1 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

いわき夜明け市場を企画し復興に一役買った人がNKKの番組で、この次はいわきの野菜を使ったスムージーの店を広げたいと意欲を見せていた

農家の人も、風評をやはりいまだに気にしている様子がぬぐえなかった

このままではいわきの野菜は自産地消もままならないのか 近くでとれる地元産が顔が見えて一番安心安全だったはずなのに

誰にも過失責任はないのか もう東電や国や県や自治体などに求める他責の意欲も信頼もない

これで国民に電気代値上げや秘密法成立、消費税値上げ、年金先送りなど協力を求めてくるのだからどうかしている