2013年12月10日火曜日

松枯れ再び

とがった岩盤のへこみに根を張った赤松の緑が、やや精彩を欠いているように感じられたのはいつだったか。半年前? いや1~2年前だったかもしれない。赤松は夏井川渓谷を代表する植生のひとつ。そのなかでも行楽客の目に留まりやすい“名木”の立ち枯れがはっきりしてきた=写真

周囲を見渡すと、十数年前の松枯れ被害を免れた若い松に“茶髪”が目立つ。直径1.5メートルはあろうかという大木はあらかた枯れ、いったん鎮静化した松枯れ現象が再び渓谷で始まったように見える。

阪神・淡路大震災と地下鉄サリン事件が起きた平成7(1995)年ごろ、渓谷の斜面の赤松はまだ元気なように見えた。が、年々、松葉に黄色いメッシュが入り、“茶髪”が増え、やがて樹皮の亀甲模様もはげ落ちて、白い幹と枝だけの“卒塔婆”になった。尾根筋のキタゴヨウマツにも、“白骨”化したものがある。

植物の専門家に聞いたら、「針葉樹は酸性雨に弱い。夏井川渓谷の松枯れはそれだろう」。ところが、若い植物研究者からは「夏井川渓谷の松枯れは、松くい虫が原因」という答えが返ってきた。要するに、複合要因によって松が枯れたのだ。

渓谷はマツタケの産地でもある。私はまだ採ったことはない。が、松枯れが進んだところでは、マツタケが消えた。老樹になるとマツタケが減るという経験則がある。酸性雨によって松の根がやられ、松の根と共生するマツタケ菌がやられるという説もある。どちらにしても、溪谷のマツタケは再び危機的状況を迎えた。

きのう(12月9日)、用事があって新舞子海岸の黒松林内を通った。大津波をかぶって立ち枯れた黒松はだいぶ伐採された。しかし、茶髪の若松が各所にあった。こちらは塩分が原因の脱水症状で枯れた。海の黒松、山の赤松。どちらの松も生きにくい時代を生きている。

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