2013年12月22日日曜日

川柳披露

ある場所での一コマ――。男性は将棋を、女性は雑談をしていた。将棋を指していたお年寄りが別のお年寄りと交代し、雑談の輪に加わった。川柳愛好家らしく、自分の作品を披露した。「嫁どのの黄色い声が支配する」。人間ではなく、ヒヨドリ=写真=の姿が思い浮かんだ。ときどき、ヒヨドリがわが家の庭にやってきては「ピー、ピー、ピー、ピー」と甲高い声で鳴く。

続けて2句。「補聴器がなくてもわかる嫁の声」「こういえばああいう嫁の世話になる」。“鬼嫁”という言葉がちらつくが、人間の顔はイメージできない。

川柳氏は、いわき市内には川柳会がいくつかあること、学校の元校長さんらが会を仕切っていることなども教えてくれた。

「嫁って、奥さんのこと?」。私が質問すると、女性陣も「奥さんでしょ?」とたたみかける。お年寄りが首を振った。「いや、嫁さん。奥さんだったら妻と書く」

妻ではなく、嫁を風刺したところが珍しい。今の福島県の状況を考えるとなおさらだ。家族がバラバラになっているのに、この川柳では嫁が同居して義父いびりに近いことをしている。にしても、月並みなにおいが消えない。

皺はよるほくろはできる背はかがむあたまははげる毛は白うなる
手は震ふ足はよろつく歯はぬける耳は聞こえず目はうとくなる

江戸時代中期の俳人横井也有(1702~83年)の狂歌だ。昔は「大げさな」と思っていたが、現実はだんだんこれに近づいている。「未知との遭遇」だ。私なら嫁さんではなく、こうした自分自身の老いを詠む。その方が、独創性が高い。

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