2014年1月2日木曜日

白鳥おばさん

 きのう、2014年元日の午後3時ごろ。平・旧市街の東方、新川と夏井川の合流点で、ハクチョウにえさ(くず米)をまくおばさんに出会った=写真

 去年の師走、といっても1週間ほど前のことだ。同じ時間帯に、堤防を利用して街から帰る途中、何十羽ものハクチョウが空に現れ、らせん状に下降しながら着水した。あわてて堤防の上からカメラを向けたが、写真としては平凡なものに終わった。空の深みを感じさせる着水シーンを撮りたい――以来、毎日意識しながらも、時間がなかった。
 
 元日はさすがに、寝ている間に新聞配達員が、昼前に郵便配達員が来ただけだった。返信を兼ねて年賀はがきを書き終えると、午後2時半になった。ハクチョウが頭の中で「コー、コー」と鳴いた。

「年賀はがきを出しに街(いわき郵便局)へ行ってくる」というと、カミサンは「そこ(家の斜め前)にポストがあるでしょ」と、そっけない。そのうえ「これから孫が来るはずよ、去年がそうだったから」という。ひとり、「ハクチョウの写真も撮りたいから」と言い訳しながら出かけた。孫よりハクチョウ、という瞬間もあるのだ。

ハクチョウはもうどこからか戻ってきたあとだった。ざっと150羽が羽を休めていた。狙った写真は撮れない。あきらめて街へ行こうとしたとき、青いバケツを提げたおばさんが堤防の上に現れ、岸辺へ下りていった。えさやりに違いない。あとからついていくと、図星だった。

“白鳥おばさん”が岸辺に着いたとたん、ハクチョウたちの動きがあわただしくなった。おばさんの方に近寄ってくる。あわてて飛んでくるものもあった。

 えさやりを終えたおばさんと少し話した。「日中はどっかに行ってるみたいね。そろってからえさをやるようにしてんの」。なるほど。それが、午後3時前後なのだろう。ハクチョウたちが戻ってくる時間と、おばさんがえさをやる時間が、両者の信頼関係のなかでおのずと定まったのだ。

 着水シーンの撮影は先送りになったが、“白鳥おばさん”の存在を初めて知った。あとは年賀はがきを投函して帰宅するだけだ。

 車で行ける堤防の終わりに東日本国際大がある。国道6号ではなく、旧道を利用していわき駅方面へ行くには、大学のある丘の南麓を岸に沿って平神橋に出るか、北側の切り通しを通ってそのまま橋を渡るかのどっちかだ。ふだんは川に沿って進む。その逆をやってみた。すると、大学正門前のポストに郵便局員がいて、中から郵便物を取り出していた。声をかけると年賀はがきを引き受けてくれた。本局まで行く手間がはぶけた。

「今年は幸先がいいぞ」。うれしい気分になって帰宅すると間もなく、元日から仕事をしているという息子のような若者がやって来た。孫たちも両親に連れられて現れた。「明けましておめでとうございます」。今年小学生になる上の孫が、親に教えられたとおりにあいさつした。神妙なところはそこまでで、あとは“初遊び”に付き合わされた。

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