2014年1月9日木曜日

除染余話

「とにかくきれいにしてください」。事前の話し合いで除染業者にそう伝えていたから、文句は言えない。前にも書いたが、夏井川渓谷にあるわが隠居(無量庵)の庭が、のっぺらぼうの“公園”になった=写真。表土をはぎとったあとに山砂が投入された。道路や隣地との境にあったササヤブがきれいに刈り払われた。どこからでもどうぞ――そんな風通しのよさ、見通しのよさだ。

 無量庵は県道沿いにある。春にはアカヤシオ(岩ツツジ)の花が、秋には紅葉が対岸の斜面を彩る。この時期、行楽客が県道や一帯の小道を往来する。無量庵の庭にも現れる。家の中でくつろいでいると、「動物園のサル」の気分になる。で、県道沿いの立ち木の枝を支えに竹を渡して“柵”をつくり、ササヤブを適当に刈りこんで“生け垣”にした。

 除染の中身としては、表土を入れ替え、敷地内の草や折損木を除去するのが主だった。立ち木はせいぜい手の届く範囲を剪定しただけ。ササヤブは草として扱われたのだろう。“生け垣”が消えたために、人はなんのためらいもなく県道から庭へ下りられる。春には菜園を再開する予定だが、アカヤシオの花が咲く4月はまだのっぺらぼうのままのはずだ。開花前には“生け垣”の代わりに柵を設けないと……。
 
 これから、いわきの人口集中地区でも除染作業が行われる。その教訓になるかどうか。「庭の雑草と一緒に山野草まで抜かれた」といったトラブルなどが起きないように、ここはこうして、これは残して、あれは除去して――と、作業の前に敷地内のすべてをチェックすることだ。アフター(除染後)のイメージを業者と共有することだ。

 でないと、それまで庭に注ぎ、手をかけてきた“時間”と“物語”も、表土の入れ替え、草の除去と同時に失われる。

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