2014年2月23日日曜日

寺のたくあん

 ある寺の奥さんがたくあん=写真=を持ってきてくれた。毎年というわけではないが、この十数年の間に何回か、たくあんの恵贈にあずかった。大震災後は初めてだ。暮らしの“復興たくあん”と呼びたくなるような新鮮さだった。真空パックに入っていた。

 私が地域紙の記者をしていたころ、漬物がないと食が進まないようなことを、コラムに書いたのだと思う。スポンサーでもあったので、社員が寺を訪ねたところ、「かわいそうだから、記者さんにやって」と、奥さんからたくあんを託された。ありがたくちょうだいした。

 わがカミサンとはすでに知り合いだったが、「かわいそうな記者」がその夫だとは知らない。私も、奥さんがカミサンと茶飲み話をする間柄であることを知らない。間もなく、バラバラだった点と線がたくあんでつながった。

 2001年9月11日。いやでもその日のことを思い出す。夜、いわきフォーラム’90主催のミニミニリレー講演会が開かれた。奥さんが寺の1年について話した。カミサンが講師をお願いした。
 
 帰宅してテレビをつけると、ニューヨークの超高層ビルに旅客機が激突する映像が飛び込んできた。同時多発テロの最初の事件が起きたのは、アメリカ東部時間で9月11日午前9時前。日本では夜の11時すぎだった。
 
 寺の奥さんの話になると、反射的に9・11の映像が思い浮かぶ。たくあんをかじりながら、最初にちょうだいしたのは、だから9・11の前だった――などと、意味もないことを考えたり、思い出したりした。

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